システムトレードのための単回帰分析入門

Python

システムトレードは、コンピュータを使って自動で取引を行う手法です。
システムトレードで利益を出すためには、データを分析して「売買のタイミング」を見つけることが重要です。そのための分析方法の一つが「単回帰分析」です。今回は、単回帰分析とは何か、そしてシステムトレードでどのように活用できるのかを解説します。

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単回帰分析とは何か

単回帰分析は、2つの変数の関係性をもとに、片方の変数からもう一方の変数を予測する手法です。シンプルな例として、気温が上がるとアイスクリームの売り上げが増えるような「1つの要因がもう1つの結果に影響を与える関係」を表すことができます。システムトレードでは、過去のデータをもとに、次のタイミングでの価格を予測するために単回帰分析が使われます。

単回帰分析の考え方

単回帰分析の基本は、「直線」を使ってデータの傾向を表すことです。この直線を「回帰直線」と呼び、2つの変数の関係を表すのに役立ちます。たとえば、株価の過去のデータから次の日の価格を予測したいとき、過去の価格と次の日の価格との関係を表す直線を求めます。

システムトレードにおける単回帰分析の役割

システムトレードでは、単回帰分析を使うことで、過去のデータをもとに次の価格の変動を予測できます。これにより、価格が上がる可能性が高いときには「買い」、下がる可能性が高いときには「売り」の判断をする際の参考にすることができます。

価格の予測

単回帰分析は、過去の価格データを使って「次のタイミングで価格がどう変動するか」を予測するのに役立ちます。予測結果が上昇傾向であれば買い、下降傾向であれば売りという判断が可能になります。

簡単な計算でできる予測

単回帰分析は、複雑な計算を必要とせず、比較的簡単に導入できます。そのため、システムトレードの初学者にも利用しやすい方法です。

単回帰分析の仕組みと計算方法

単回帰分析は、「y = ax + b」という数式で表されます。ここで、aが「傾き」、bが「切片」を意味し、この直線を使って予測を行います。

傾きと切片

  • 傾き (a):データの増減の傾向を示します。例えば、aがプラスであれば、xが増えるとyも増える関係、aがマイナスであれば、xが増えるとyが減る関係になります。
  • 切片 (b):y軸との交点を表します。この値が大きいと、全体的にyの値が高くなります。

これらの値を求めることで、次のような予測が可能になります。たとえば、前日の価格が100円、傾きが1.5、切片が10であれば、次の日の予測価格は100 × 1.5 + 10 = 160円と予測できます。

単回帰分析をシステムトレードに活用する流れ

ここでは、システムトレード単回帰分析を使って予測を行う流れを紹介します。

データの収集

まず、株価や為替レートなど、予測に必要なデータを集めます。過去1か月分のデータなど、直近の価格変動を把握できるデータが役立ちます。

傾きと切片の計算

集めたデータをもとに、回帰直線の「傾き」と「切片」を求めます。これらの値を使って次の価格を予測します。Pythonなどのプログラミング言語を使えば、簡単に計算できます。

予測結果の確認

傾きと切片を求めたら、実際に予測を行い、結果がどの程度正確かを確認します。予測と実際の値に大きなズレがある場合は、データを増やす、あるいは別の手法も試してみると良いでしょう。

単回帰分析をシステムトレードで使う際の注意点

単回帰分析は手軽に使える手法ですが、いくつか注意点もあります。

  • 相場は常に同じパターンで動くわけではないため、過去のデータがそのまま未来に当てはまるとは限りません。
  • 単回帰分析はあくまで「1つの要因」と「結果」の関係を表すため、複数の要因が絡む場合には重回帰分析など別の手法が必要になることもあります。
  • 短期間のデータでは誤差が大きくなることがあるため、複数の期間で検証するとより安定した予測が可能です。

単回帰分析を使ったシステムトレードの例

ここでは、Pythonを使って、単回帰分析で株価の予測を行う簡単な例を紹介します。以下のコードでは、過去の株価データから次の日の終値を予測します。

単回帰分析による株価予測の例

# 必要なライブラリをインポート
import numpy as np
from sklearn.linear_model import LinearRegression

# ダミーデータを作成(実際のデータでは株価の終値を使用)
data = np.array([100, 102, 101, 105, 107, 108, 110, 115, 120, 125, 130, 128, 129, 133, 135, 138, 140, 145, 150, 155])

# 説明変数(x)と目的変数(y)を作成
X = np.array([i for i in range(len(data) - 1)]).reshape(-1, 1)
y = data[1:]

# 単回帰分析のモデルを作成
model = LinearRegression()
model.fit(X, y)

# 次の日の予測
next_day_prediction = model.predict(np.array([[len(data)]]))
print("予測される次の日の終値:", next_day_prediction)

コードの解説

  1. 必要なライブラリをインポート:まず、numpyLinearRegressionを使うために、import numpy as npfrom sklearn.linear_model import LinearRegressionを記述します。numpyは数値計算を効率的に行うためのライブラリで、LinearRegression単回帰分析のモデルを作成するために使います。
  2. ダミーデータを作成変数dataには過去の株価を格納しています。この例では、ダミーデータとして株価の終値を用意していますが、実際にはリアルな株価データを使います。np.arrayを使ってデータを配列として保存します。
  3. 説明変数(X)と目的変数(y)を作成:ここでは、説明変数Xと目的変数yを作成します。説明変数Xは日数(0, 1, 2, …)を表し、目的変数yは次の日の株価を表します。reshape(-1, 1)はデータを縦ベクトルの形に変形するために使います。
    説明変数とは:説明変数とは、「原因となるデータ」のことです。この例では、日数(0, 1, 2, …)が説明変数にあたります。株価がどう変化するかを知るために、日数を使って分析を行います。
    目的変数とは:目的変数とは、「結果となるデータ」のことです。この例では、次の日の株価が目的変数にあたります。説明変数(日数)を使って、どのように株価が変化するかを予測します。
  4. 単回帰分析のモデルを作成LinearRegression()を使って単回帰分析のモデルを作成し、model.fit(X, y)でデータを学習させます。fitメソッドは、与えられたデータから回帰直線の傾きと切片を計算します。
    回帰直線とは:回帰直線とは、データの傾向を最もよく表す「まっすぐな線」のことです。この直線は、データの間にある関係性を数式で表現したもので、将来の値を予測するために使われます。例えば、日数と株価の関係を見て、その傾向に最も合うように引いた線が回帰直線です。この線を使うことで、次の日の株価などを予測することができます。
  5. 次の日の予測:次の日の予測を行うために、model.predict(np.array([[len(data)]]))を使います。len(data)はデータの長さを表し、次の日を予測するために使います。predictメソッドは、説明変数を基に目的変数を予測するために使います。
  6. 予測結果の表示:最後に、print("予測される次の日の終値:", next_day_prediction)を使って、予測結果を表示します。ここで、next_day_predictionには次の日の株価の予測値が格納されています。

まとめ

単回帰分析は、システムトレードにおいて「1つの要因から1つの結果を予測する」ためのシンプルで効果的な手法です。過去のデータをもとに次のタイミングでの価格変動を予測することで、売買の判断を行う際の参考にできます。シンプルな手法であるため、システムトレードを始めたばかりの人でも導入しやすい方法です。

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