システムトレードのための重回帰分析入門

Python

システムトレードは、コンピュータが自動的に売買のタイミングを判断することで利益を狙う手法です。システムトレーダーが正しい売買の判断をするためには、多くのデータをもとに相場を分析することが重要です。その分析手法の一つが「重回帰分析」です。この記事では、重回帰分析の仕組みやシステムトレードでの活用方法について、わかりやすく解説します。

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重回帰分析とは何か

重回帰分析は、複数の要因が結果に影響を与えている場合に、その関係を数式として表し、予測を行う手法です。シンプルな単回帰分析では「1つの要因と1つの結果」の関係を表しますが、重回帰分析では「複数の要因と1つの結果」の関係を扱うため、より多くの情報をもとに正確な予測ができます。

重回帰分析の基本的な考え方

重回帰分析は、「y = a1x1 + a2x2 + … + anxn + b」という数式で表されます。

  • y:予測したい値(たとえば、次の日の株価)
  • x1, x2, … xn:結果に影響を与える要因(たとえば、出来高や取引回数、過去の株価の変動など)
  • a1, a2, … an:それぞれの要因の影響度(重み)を示す係数
  • b:切片といい、全体の値を調整するための定数

システムトレード重回帰分析を使うと、複数の要因をもとにして相場の動きを予測できるため、精度の高い売買の判断が可能になります。

システムトレードにおける重回帰分析の役割

システムトレードでは、重回帰分析を使って複数の要因を同時に分析し、次のような予測を行います。

複数の要因を考慮した価格予測

株価や為替の変動には、さまざまな要因が関係しています。例えば、前日の価格、出来高、移動平均線などがその要因となります。重回帰分析は、これらの複数の要因をもとに、次の日の価格を予測するのに役立ちます。

より正確な売買判断

単回帰分析では「1つの要因」だけをもとに予測を行いますが、重回帰分析では複数の要因をもとにするため、より正確な判断が可能です。システムトレードにおいて、こうした複数要因の分析は、相場のパターンや取引のタイミングをつかむうえで重要です。

重回帰分析の仕組みと計算方法

重回帰分析では、y = a1x1 + a2x2 + … + anxn + bという数式で、要因と結果の関係を表します。この式の中で、a1, a2, … anが「各要因の影響度」を示し、bが全体の基準となる「切片」を示します。これらの値を求めることが、重回帰分析の重要なポイントです。

各要因の影響度(係数)を求める

係数a1, a2, … anは、それぞれの要因が結果にどの程度影響を与えるかを示しています。例えば、前日の価格が次の日の価格に強い影響を与える場合、前日の価格に対応する係数が大きくなります。

切片(b)の役割

切片bは、すべての要因がゼロになったときの予測値を示しています。例えば、全ての要因が初期値に戻った場合でも、yの値がどのくらいかを示すための調整役となります。

システムトレードにおける重回帰分析の流れ

重回帰分析システムトレードで活用する際の流れを紹介します。

データの収集

まずは、予測したい値に影響を与えるデータを集めます。例えば、株価の予測であれば、過去の株価や出来高、移動平均などのデータが役立ちます。

データの整理(前処理)

集めたデータをそのまま使うのではなく、欠損値の補完やデータの正規化(値の範囲をそろえること)を行います。この工程を「データの前処理」と呼びます。

係数と切片の計算

重回帰分析の計算を行い、各要因の係数a1, a2, … anと切片bを求めます。Pythonなどのプログラムを使うと、簡単に計算できます。

モデルの評価と修正

計算した係数と切片をもとに予測を行い、実際の値と比較して精度を評価します。予測と実際の値が大きくずれている場合は、要因の見直しやデータの追加などを行い、モデルを改善します。

重回帰分析をシステムトレードで使う際の注意点

重回帰分析は非常に有用ですが、いくつかの注意点があります。

  • 相場はさまざまな要因で変動するため、すべてを重回帰分析でカバーできるわけではありません。市場の大きな変化には対応しづらい点に留意が必要です。
  • データが少ないと、正確なモデルを作るのが難しくなります。精度を高めるために、なるべく多くのデータを集めると良いでしょう。
  • すべての要因が同じ影響を与えるわけではありません。強い影響を与える要因を見極め、分析に使うデータを選別することが大切です。

重回帰分析を使ったシステムトレードの例

ここでは、Pythonを使って、重回帰分析で株価を予測する簡単な例を紹介します。この例では、前日の株価と出来高のデータをもとに次の日の株価を予測します。

重回帰分析による株価予測の例

# 必要なライブラリをインポート
import numpy as np
from sklearn.linear_model import LinearRegression

# ダミーデータ(実際のデータでは株価や出来高を使用)
# 各データは [前日の価格, 出来高] の順で構成
X = np.array([
    [100, 2000],
    [102, 2100],
    [101, 2150],
    [105, 2200],
    [107, 2300],
    [108, 2400],
    [110, 2450],
    [115, 2500],
    [120, 2600],
    [125, 2700]
])

# 次の日の株価を目的変数として設定
y = np.array([102, 101, 105, 107, 108, 110, 115, 120, 125, 130])

# 重回帰分析のモデルを作成
model = LinearRegression()
model.fit(X, y)

# 次の日の予測
next_day_prediction = model.predict(np.array([[130, 2800]]))
print("予測される次の日の株価:", next_day_prediction)

コードの解説

  1. 過去のデータを用意する
    • まず、過去のデータを「説明変数(要因)」として用意します。この説明変数は、予測したい値に影響を与える要因です。
    • ここでは、変数Xに前日の株価と出来高のデータを格納しています。Xは2次元のリストで、各要素[前日の価格, 出来高] という形になっています。
    • np.array()を使ってリストをNumPyの配列に変換します。NumPyは、数値計算を効率よく行うためのライブラリです。
  2. 目的変数(結果)を設定する
    • 目的変数とは、予測したい「結果」のデータのことです。
    • ここでは、次の日の株価を予測するために、変数yに次の日の株価のデータを格納しています。このyは説明変数Xに対応する結果の値です。
    • ynp.array()を使ってNumPyの配列に変換します。
  3. 重回帰分析モデルを作成し、学習させる
    • LinearRegression()を使って重回帰分析モデルを作成します。このモデルは、複数の要因を使って結果を予測するためのものです。
    • model.fit(X, y)を使って、説明変数Xと目的変数yモデルに学習させます。fitメソッドは、Xyのデータを使って、回帰直線(ここでは複数の要因を使うための平面や超平面)の係数(影響度)と切片を計算します。
  4. 次の日の株価を予測する
    • 次の日の株価を予測するために、model.predict(np.array([[130, 2800]]))を使います。
    • np.array([[130, 2800]])は、新しいデータを2次元配列で渡しています。ここでは、前日の株価が130で、出来高が2800であった場合の次の日の株価を予測します。
    • predictメソッドは、学習したモデルを使って、与えられた説明変数から目的変数を予測します。
  5. 予測結果を表示する
    • print("予測される次の日の株価:", next_day_prediction)で、予測した次の日の株価を表示します。
    • 変数next_day_predictionには、予測された次の日の株価の値が格納されています。この予測結果を使って、実際にどのような売買の判断をするかを決めることができます。

まとめ

重回帰分析は、システムトレードにおいて「複数の要因から1つの結果を予測する」ための強力な手法です。複数

のデータをもとに相場の変動を予測できるため、単回帰分析よりも精度の高い予測が可能です。システムトレードでは、過去のデータから傾向を学び、次の取引タイミングを判断することが大切です。

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