三角関数とは何か
三角関数は、角度と距離の関係を扱う数学の一分野であり、特に三角形の性質を理解するために使われます。三角関数はサイン(sin)、コサイン(cos)、タンジェント(tan)という3つの基本的な関数によって構成されています。
例えば、ある角度で傾いた坂道の高さや、空中で飛ぶ物体の位置を計算したりする場合に、三角関数を使ってその高さや位置を正確に求めることができます。これにより、現実世界のさまざまな問題を解決するために三角関数が使われます。
三角関数が「三角形」をもとにしているのは、角度を含む図形の基本単位が三角形だからです。特に直角三角形では、角度と辺の長さが一定の法則で結びついており、これを使っていろいろな計算ができます。このため、三角関数は角度と長さの関係を調べたり、周期的に変動する現象(波の動きなど)を表現するのに便利です。
三角関数の基本(サイン、コサイン、タンジェント)
三角関数の基礎を成す3つの関数は、サイン(sin)、コサイン、タンジェント(tan)です。これらは直角三角形の角度と辺の長さの比率を表しており、以下でそれぞれの関数について解説します。
サイン(sin)
サインは、直角三角形の一つの角(通常はθと表記)に対して「その角の向かい側の辺の長さ」を「斜辺の長さ」で割った比率です。サインの関係式は次のように書けます。
sin(θ) = 向かい側の辺 / 斜辺
例えば、θが30度の場合、sin(30°)は0.5になります。これは、30度の角度を持つ直角三角形では、向かい側の辺の長さが斜辺の半分になることを意味します。
コサイン(cos)
コサインは、角度θに対して「隣り合う辺の長さ」を「斜辺の長さ」で割った比率です。コサインの関係式は以下のように表せます。
cos(θ) = 隣り合う辺 / 斜辺
例えば、θが60度の場合、cos(60°)は0.5です。これは、60度の角度を持つ直角三角形で、隣り合う辺が斜辺の半分の長さになることを示しています。
タンジェント(tan)
タンジェントは、角度θに対して「向かい側の辺の長さ」を「隣り合う辺の長さ」で割った比率です。タンジェントの関係式は次のように書けます。
tan(θ) = 向かい側の辺 / 隣り合う辺
例えば、θが45度の場合、tan(45°)は1です。これは、45度の角度を持つ直角三角形では、向かい側の辺と隣り合う辺の長さが等しいことを意味します。
単位円と角度
三角関数をさらに深く理解するためには、「単位円」の概念が重要です。単位円とは、半径が1の円を指し、三角関数の基本的な性質を表すのに便利な道具となります。この円を使うと、サイン、コサイン、タンジェントの値を角度に基づいて視覚的に理解できるようになります。
単位円の基本
単位円は、x軸とy軸が交差する点を中心とし、半径が1の円として描かれます。この円の周囲の点は、角度に応じて座標が決まります。例えば、円の右端の点(1, 0)は0度(または360度)に対応し、上端の点(0, 1)は90度、左端の点(-1, 0)は180度、下端の点(0, -1)は270度に対応します。
単位円上の角度は、円の中心から時計回りまたは反時計回りに測ります。通常、反時計回りの方向を正の方向として、0度から360度までの範囲で角度を表現します。
単位円とサイン・コサインの関係
単位円上の任意の角度θについて、サインとコサインの値は円周上の点の座標(x座標とy座標)として表せます。このとき、次のような関係が成り立ちます。
- cos(θ) = x座標
- sin(θ) = y座標
なぜ cos(θ) が x 座標、sin(θ) が y 座標を表すのか
この関係が成り立つ理由は、直角三角形の性質と単位円の特性にあります。
まず、単位円を考えましょう。単位円は、半径が1で、円の中心が原点(0,0)です。ここで、中心から円周上のある点まで線を引き、その線がx軸と成す角度をθとします。このとき、円の中心、x軸上の垂直な位置にある点、そして円周上の点が直角三角形を形成します。
- 単位円の半径が1なので、斜辺の長さは常に1です。
- 三角関数の定義により、サインは「向かい側の辺 ÷ 斜辺」、コサインは「隣り合う辺 ÷ 斜辺」です。
- 単位円では、斜辺が1なので、サインとコサインはそれぞれ「向かい側の辺の長さ」と「隣り合う辺の長さ」そのものを表します。
この直角三角形において、角度θに対して次の関係が成り立ちます。
- 向かい側の辺の長さが y 座標の値になります。このため、sin(θ) は y 座標を表します。
- 隣り合う辺の長さが x 座標の値になります。このため、cos(θ) は x 座標を表します。
したがって、単位円の任意の角度θについて、cos(θ) は x 座標、sin(θ) は y 座標を表すことになる訳です。
たとえば、θが30度のとき、単位円上の点のx座標は約0.866、y座標は0.5です。このため、cos(30°) ≈ 0.866、sin(30°) ≈ 0.5となります。この関係はすべての角度について成り立つため、三角関数の値を視覚的に理解する助けとなります。
タンジェントと単位円
タンジェントは、サインとコサインの比率で表すことができるため、次のように定義されます。
tan(θ) = sin(θ) / cos(θ)
なぜタンジェントはサインとコサインの比率で表すことができるのか
タンジェントがサインとコサインの比率で表される理由は、直角三角形における「向かい側の辺」と「隣り合う辺」の関係から説明できます。
直角三角形において、角度θに対して、次のような三角関数の定義が成り立ちます。
ここで、サインとコサインの値を利用してタンジェントを考えてみましょう。
まず、サインを使った式で「向かい側の辺」は、次のように表されます。
向かい側の辺 = sin(θ) × 斜辺
また、コサインを使った式で「隣り合う辺」は、次のように表されます。
隣り合う辺 = cos(θ) × 斜辺
このとき、タンジェントの定義「向かい側の辺 ÷ 隣り合う辺」にこれらの式を代入すると、次のようになります。
tan(θ) = (sin(θ) × 斜辺) / (cos(θ) × 斜辺)
ここで「斜辺」は分子と分母で共通しているので、約分することができます。約分すると、次のような式が導かれます。
tan(θ) = sin(θ) / cos(θ)
このようにして、タンジェントはサインとコサインの比率で表すことができるのです。この関係から、コサインが0になる90度や270度では、tan(θ)が定義されない理由も理解できます。
三角関数のグラフと周期性
三角関数には、特有の「周期性」があります。これは、一定の間隔で繰り返し同じ値を取る性質です。三角関数の代表的なサイン、コサイン、タンジェントのグラフを見ると、これがどのように表れるかを確認することができます。
サインとコサインのグラフ
サインとコサインのグラフは、波のような形をしています。それぞれの角度(θ)に対して、サインやコサインの値がどのように変化するかを観察すると、以下のような特徴が見えてきます。
- サインのグラフ: θが0度から始まるとき、sin(θ)は0からスタートし、90度で1になります。その後、180度で再び0に戻り、270度で-1、360度でまた0に戻ります。このように、360度(または2πラジアン)ごとに値が繰り返されるため、sin(θ)の周期は360度(2π)です。
※なお、ラジアンとは、角度を表す単位の一つで、円の弧(円周の一部)の長さを半径で割った値として定義されます。1周(360度)は2πラジアンに相当します。 - コサインのグラフ: cos(θ)は、θが0度のときに1からスタートし、90度で0、180度で-1、270度で再び0、そして360度で1に戻ります。これもサインと同じく、360度(2π)ごとに値が繰り返されるので、周期は360度(2π)です。
このように、サインとコサインはそれぞれ周期的な波のような動きをし、一定の間隔で値が同じになります。これが、サインやコサインが周期的に変動する現象を表すのに適している理由です。
タンジェントのグラフ
タンジェントのグラフも、サインやコサインと同様に角度に応じて値が変化しますが、異なる点があります。タンジェントは、90度(または270度)でコサインが0になるため、そのときに「無限大」へと発散し、値が定義されません。そのため、タンジェントのグラフには90度ごとに「縦の切れ目」が現れます。
タンジェントの周期は180度(πラジアン)で、0度から始まり、90度で無限大に発散し、次の180度で再び同じパターンが繰り返されます。つまり、タンジェントの周期は180度(π)です。
三角関数の周期性と繰り返しの特徴
このように、三角関数は一定の角度で値が繰り返される「周期性」を持っており、サインとコサインは360度(2π)、タンジェントは180度(π)の周期を持ちます。周期性の理解は、波のように繰り返し変動する現象やデータを扱う際に役立ちます。
補足:斜辺とは
斜辺とは、直角三角形において、直角(90度)を挟む2つの辺以外の「一番長い辺」を指します。この斜辺は、三角関数でサインやコサインを計算するときに重要な役割を果たします。
例えば、直角三角形を見たときに、他の2つの辺は直角に接しているため、これらは「直角を挟む辺」となります。一方で、直角に接していない残りの1つの辺が「斜辺」です。
斜辺は次のような特徴を持っています。
- 直角三角形の中で最も長い辺である。
- 斜辺の長さは、直角を挟む2辺の長さから決まります。
- 三平方の定理(ピタゴラスの定理)では、「斜辺の長さの2乗は、他の2辺の長さの2乗の合計に等しい」と表現されます。この定理は、以下の式で表されます。
斜辺の長さ^2 = 一辺の長さ^2 + もう一辺の長さ^2
このように、直角三角形における斜辺は三角関数を理解するうえで重要な要素となり、特にサインやコサインの定義に関係してきます。
三角関数に関するMQL5の組み込み関数
三角関数に関するMQL5の組み込み関数として、以下の関数がよく使用されます。これらは、角度の計算や波形の生成、周期的なデータの処理などに役立つものです。各関数の詳細はリンク先の記事をご参照ください。