システムトレードと機械学習初心者の為の特徴量エンジニアリング解説

Python
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初めに

システムトレード機械学習において、「特徴量エンジニアリング」は非常に重要な役割を果たします。とはいえ、「特徴量」や「モデル」という言葉自体に馴染みがない方も多いかと思います。
ここでは、これらの基本的な概念をわかりやすく解説し、さらに特徴量エンジニアリングの具体的な方法についても説明します。

特徴量とは?

機械学習における「特徴量」とは、予測を行うためのヒントとなるデータの一つ一つの項目のことです。簡単に言えば、データの中で「これは重要な情報だ」とモデルが学ぶ材料となるものです。

たとえば、株価の予測を例に考えてみましょう。予測のために使える情報として「現在の株価」や「取引量」などがあります。これらは全て特徴量です。特徴量は、機械学習モデルにとって「予測の手がかり」となるもので、モデルが「今後どうなるか」を学ぶための材料です。

モデルとは?

モデルとは、機械学習アルゴリズムが学習によって作り上げた「予測の仕組み」のことです。これは、特徴量(データ)をもとに未来を予測するためのルールやパターンの集合です。

たとえば、株価予測モデルを作る場合、株価や取引量の特徴量を元に「次の日の株価は上がるか下がるか」を予測するルールが作られます。
こうした予測ルールのことを「モデル」と呼びます。

特徴量エンジニアリングとは?

特徴量エンジニアリングとは、モデルに入れるデータ(特徴量)を加工・変換し、モデルが予測しやすい形に整えるプロセスのことです。
モデルが正確に予測を行うには、ただのデータでは不十分なことが多いため、データの加工や変換が必要です。

たとえば、「株価予測モデル」を作成するとき、単に「現在の株価」だけでなく、「過去1週間の平均株価」や「直近の取引量の変化」などを特徴量として追加することで、モデルの精度を向上させることができます。

特徴量エンジニアリングが必要な理由

モデルは、適切なデータが与えられれば、より正確な予測が可能になります。したがって、特徴量エンジニアリングを行うことで、モデルが効率よく学習でき、予測精度が向上します。

システムトレードでは、株価や通貨レートの予測において、特徴量エンジニアリングが特に重要です。取引量や移動平均といった指標を加工して特徴量とすることで、価格変動のパターンを捉えやすくなります。

特徴量エンジニアリングの基本的な手法

特徴量エンジニアリングにはいくつかの基本的な方法があります。ここでは、代表的なものを紹介します。

1. データの正規化と標準化

データの値がバラバラなスケールであると、モデルがうまく学習できないことがあります。これを防ぐため、数値の範囲を調整します。

  • 正規化
    データを0から1の範囲に収めます。たとえば、株価のデータを最小値0、最大値1に変換することで、スケールを統一できます。
  • 標準化
    データを平均0、標準偏差1に変換します。これにより、データが平均を中心に広がるように調整されます。

2. カテゴリ変数のエンコーディング

「曜日」や「月」などの文字で表されるデータを、数値に変換します。文字データのままだとモデルが理解できないためです。

  • ワンホットエンコーディング
    各カテゴリを0と1の配列で表します。たとえば、曜日データを「月=0」「火=1」などに変換することで、モデルが学習できるようになります。

3. 欠損値処理

データの中に空欄がある場合、それを補完する方法です。

  • 平均値で埋める
    欠損値の部分をデータ全体の平均値で補完します。株価データで価格の一部が欠損している場合、その部分を他の値で補完して安定したデータにします。

システムトレードに役立つ特徴量エンジニアリングのアイデア

特徴量エンジニアリングは、システムトレードで使う予測モデルの精度向上に欠かせません。ここでは具体的なアイデアをいくつか紹介します。

テクニカル指標を特徴量として追加する

テクニカル指標(インジケータ)とは、過去の価格や取引量をもとに市場の動きを予測するための指標です。たとえば、移動平均やRSI(相対強度指数)を特徴量として使用することで、価格変動の傾向を捉えやすくなります。

過去の価格データを特徴量にする

単純な現在価格だけでなく、過去1週間、1か月の価格の平均値や変化率を特徴量にすると、過去の価格傾向を学習するのに役立ちます。

マーケットイベント情報を追加する

経済指標の発表や企業の決算などのイベント情報も特徴量として追加することで、価格の急変動を捉えやすくします。

特徴量エンジニアリングの具体例

ここでは、株価データを使って特徴量エンジニアリングを行う例を紹介します。

特徴量エンジニアリングの手順

  1. データの確認
    株価データを確認し、各データにどのような特徴が含まれているかをチェックします。
  2. 特徴量の作成
    移動平均や前日の価格差などの新しい特徴量を作成します。
  3. スケーリング
    データのスケールを統一し、正規化や標準化を行います。

Pythonによるサンプルコード

以下はPythonを使った簡単なコード例です。

import pandas as pd  # pandasライブラリをインポート
from sklearn.preprocessing import MinMaxScaler  # データの正規化用にMinMaxScalerをインポート

# 株価データを読み込む
# データファイル「stock_data.csv」には、日付、始値、高値、安値、終値、取引量などの情報が含まれていると仮定
data = pd.read_csv('stock_data.csv')

# 特徴量の作成
# 「price_diff」列には、前日の終値との差分を計算して保存
# 「Close」列の値の差分をとることで、前日比の価格変動を特徴量として取得
data['price_diff'] = data['Close'].diff()  

# 「moving_average」列には、終値の5日移動平均を計算して保存
# 「Close」列の過去5日分の平均値を計算し、直近の価格動向を把握するための特徴量を作成
data['moving_average'] = data['Close'].rolling(window=5).mean()  

# データの正規化
# 特徴量「price_diff」と「moving_average」を0から1の範囲に収める
# MinMaxScalerを使うことで、異なるスケールの値を同じ範囲に収め、モデルが学習しやすい形に整える
scaler = MinMaxScaler()
data[['price_diff', 'moving_average']] = scaler.fit_transform(data[['price_diff', 'moving_average']])

# 結果を確認
# 正規化された「price_diff」と「moving_average」列の最初の5行を表示し、変換結果を確認
print(data[['price_diff', 'moving_average']].head())

サンプルコードの詳細解説

以下では、サンプルコードの各部分がどのような意味を持つか、順を追って説明していきます。初めてコードを見る方でも理解できるように、基本的な文法事項についても説明しています。


ライブラリのインポート

import pandas as pd
from sklearn.preprocessing import MinMaxScaler

まず最初に、pandas(パンダス)というライブラリをpdという短縮名でインポートしています。pandasはデータを扱うための便利なライブラリで、表のようなデータを簡単に読み込んだり、加工したりする機能が豊富です。

また、sklearn.preprocessing(サイキット・ラーンのプリプロセッシング)というモジュールからMinMaxScalerというクラスもインポートしています。MinMaxScalerは、データの値を0から1の範囲に収めるために使用する機能です。このように他のコードやライブラリを呼び出して使えるようにすることを「インポート」と言います。


株価データの読み込み

data = pd.read_csv('stock_data.csv')

pd.read_csvというpandasメソッド(機能)を使って、stock_data.csvというファイルからデータを読み込んでいます。ここで使われている.csvというファイル形式は「カンマ区切りのテキストデータ」を意味します。株価データのように表形式で数値を管理するデータは、.csv形式で保存されることが多いです。

この行では、pd.read_csv('stock_data.csv')の結果がdataという変数代入されています。変数dataは、この後の処理でデータを扱うための「箱」として機能します。


特徴量「price_diff」の作成

data['price_diff'] = data['Close'].diff()

ここでは、新しい特徴量として「price_diff」という列を作成しています。

  • data['Close']は、読み込んだデータの「Close」列(終値)を指しています。
  • .diff()は、前の行との差分を計算するpandasメソッドです。今回のサンプルコードのように、今日の終値と前日の終値との差を計算することができます。

つまり、この行のコードでは「今日の終値」と「前日の終値」の差を計算し、その結果を新しい列price_diffに保存しています。この差分を特徴量として追加することで、株価が前日からどれくらい変動したのかを知ることができます。


特徴量「moving_average」の作成

data['moving_average'] = data['Close'].rolling(window=5).mean()

ここでは、「moving_average」という名前の列を作成しています。これは株価の5日移動平均を計算した結果を保存するものです。

  • data['Close']は、先ほどと同様に終値の列です。
  • .rolling(window=5)は、5日分のデータを取り出して、その範囲で計算するためのpandasメソッドです。
  • .mean()は平均を計算するメソッドです。

したがって、このコードは「直近5日間の終値の平均」をmoving_averageという新しい列に保存します。移動平均を特徴量として追加することで、価格のトレンド(上昇や下降)を知ることができます。


データの正規化

scaler = MinMaxScaler()
data[['price_diff', 'moving_average']] = scaler.fit_transform(data[['price_diff', 'moving_average']])

ここでは、先ほど作成した特徴量price_diffmoving_averageの値を0から1の範囲に変換しています。これを「正規化」と呼びます。

  • scaler = MinMaxScaler()は、MinMaxScalerというクラスを使ってscalerという名前の変数を作っています。これは「スケーラー」と呼ばれるオブジェクトで、数値を0から1の範囲に収めるために使います。
  • scaler.fit_transform(data[['price_diff', 'moving_average']])では、dataprice_diff列とmoving_average列を0から1の範囲に変換し、その結果をdata[['price_diff', 'moving_average']]に上書き保存しています。

ここでfit_transformというメソッドが使われています。このメソッドは、データに合わせてスケーリング(数値の範囲を調整)し、その結果を返します。こうすることで、異なるスケールのデータが同じ範囲に収まるため、モデルが学習しやすくなります。


結果の確認

print(data[['price_diff', 'moving_average']].head())

最後に、printという関数で、dataprice_diff列とmoving_average列の最初の5行を表示しています。.head()は、データの先頭5行を取り出すためのpandasメソッドです。

  • print関数は、指定した内容を画面に表示するために使います。ここでは、正規化が正しく行われたかを確認するために出力しています。

コード全体の流れのまとめ

  1. ライブラリのインポート
    データ処理に必要なライブラリpandasと、正規化のためのMinMaxScalerをインポートします。
  2. データの読み込み
    pd.read_csvで、株価データstock_data.csvdata変数に読み込みます。
  3. 特徴量「price_diff」の作成
    前日と当日の終値の差分をprice_diffという新しい特徴量に追加します。
  4. 特徴量「moving_average」の作成
    5日間の終値の移動平均を計算し、moving_average列に追加します。
  5. データの正規化
    price_diffmoving_averageの列の値を0から1の範囲に変換します。
  6. 結果の確認
    正規化された値が正しいか、先頭5行を表示して確認します。

基本的な文法の解説

  • 変数
    datascalerのように、値を一時的に保存しておくための「名前の付いた箱」のことを変数と言います。
  • メソッド
    .diff().mean()のように、データに対して特定の操作(例えば、差分を計算する、平均を求めるなど)を行うための「機能」を持つものをメソッドと言います。メソッドは「.(ドット)」でつなげて呼び出します。
  • 関数
    printのように、与えられた入力に対して特定の処理を実行するものを関数と言います。関数関数名(引数)の形で呼び出します。

このコードは、株価データを加工し、機械学習モデルが学習しやすい形に整える例として基本的かつ重要なプロセスを含んでいます。

特徴量エンジニアリングのまとめ

特徴量エンジニアリングは、機械学習モデルの予測力を引き出すために欠かせないプロセスです。モデルが理解しやすい形にデータを加工・変換することで、システムトレードにおける予測精度を向上させることができます。株価予測のようなシステムトレードにおいても、価格の変化やテクニカル指標をうまく特徴量に変換することで、より良いトレード判断をサポートすることが可能です。

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