- 機械学習とは何か
- システムトレードにおける機械学習の役割
- 機械学習の基本的な手法
- 機械学習をシステムトレードに活用する際の流れ
- 機械学習を活用したシステムトレードの例
- 文法要素の解説
- import numpy as np
- from sklearn.linear_model import LinearRegression
- data = np.array([…])
- X = np.array([data[i:i+29] for i in range(len(data) – 30)])
- 1. data の理解
- 2. range(len(data) - 30) の部分
- 3. for i in range(len(data) - 30) の部分
- 4. data[i:i+29] の部分
- 5. [] を使ったリスト内包表記
- 6. np.array() で NumPy 配列に変換
- 7. i:i+29 のスライス記法について
- この箇所の記述の流れまとめ
- y = data[30:]
- model = LinearRegression()
- model.fit(X, y)
- next_day_prediction = model.predict([data[-29:]])
- print(“予測される次の日の終値:”, next_day_prediction)
- システムトレーダーにとっての機械学習のメリットと今後の展望
機械学習とは何か
機械学習とは、コンピュータにデータを「学習」させて、そのデータから「パターン」や「傾向」を見つけ出す方法です。機械学習は、人がルールを教え込むのではなく、データからコンピュータ自身がルールを見つけていくため、我々が自覚できなかったルールを発見する可能性もあります。
機械学習の基本的な考え方
機械学習の基本は、大量のデータをもとに「予測」や「分類」を行うことです。たとえば、次のようなことが可能です。
- 株価が上がるか下がるかを予測する
- 現在の相場状況を過去のパターンと照らし合わせて分類する
これらは、取引で利益を出すための判断材料に役立ちます。
システムトレードにおける機械学習の役割
システムトレードでは、コンピュータが人の代わりに売買のタイミングを判断します。機械学習をシステムトレードに組み込むことで、以下のようなことが可能になります。
- 相場の予測:過去のデータをもとに、将来の価格変動を予測します。
- 売買の判断:上がる可能性が高いタイミングで買い、下がる可能性が高いタイミングで売るように設定できます。
これにより、機械学習はシステムトレードにおいて「データから学ぶ力」と「将来を予測する力」を提供する重要な役割を果たしています。
機械学習の基本的な手法
機械学習にはいくつかの手法があり、用途に応じて使い分けます。以下は、システムトレードに役立つ主な手法です。
1. 回帰分析
回帰分析は、連続する数値を予測するための手法です。システムトレードでは、例えば「次の日の終値はいくらになるか」といった予測に使えます。
※回帰分析については下記の記事をご参照ください。
2. クラスタリング
クラスタリングは、データを似た特徴ごとにグループに分ける手法です。システムトレードでは、相場の状況をいくつかのグループに分け、それぞれに適した戦略をとるのに役立ちます。
※クラスタリングについては下記の記事をご参照ください。
3. ディープラーニング
ディープラーニングは、特に複雑なデータからパターンを見つけ出す手法です。システムトレードでは、大量の取引データや経済データを分析して、売買のタイミングを高度に予測することが可能です。
※ディープラーニングについての詳細は下記の記事をご参照ください。
機械学習をシステムトレードに活用する際の流れ
システムトレードで機械学習を活用する際には、次のような流れで進めていきます。
データの収集
まずは、株価や為替などのデータを集めます。このデータが機械学習の「教材」となります。データの量が多いほど、正確な予測ができる可能性が高くなります。
データの前処理
収集したデータをそのまま使うのではなく、整理して扱いやすい形にします。この工程は「データの前処理」と呼ばれます。例えば、データの中に「欠損値(抜けている値)」があれば、それを埋めたり取り除いたりします。
モデルの選択と学習
次に、適切な機械学習の手法を選び、モデルを構築していきます。ここで言う「モデル」とは、学習によって得られる「予測のためのルール集」のことです。データをもとに学習させて、売買のタイミングを判断するモデルを作ります。
テストと評価
学習させたモデルが正しく働くかどうかをテストします。テストには、過去のデータを使って「どれだけ正確に予測できたか」を確認する方法が一般的です。この評価で良い結果が得られれば、モデルを実際の取引に活用していきます。
機械学習を活用したシステムトレードの例
ここでは、簡単な機械学習モデルを使って、株価のトレンドを予測しようとするシステムトレードの例を紹介します。
トレンド予測のための回帰分析モデル
例えば、株価の過去30日間の終値データを使って、次の日の終値を予測するモデルを構築します。このモデルでは、30日分のデータを入力し、その次の日の予測を出力します。
# numpyライブラリをnpという短縮名でインポートする
import numpy as np
# scikit-learnライブラリから、線形回帰モデルを使うためのLinearRegressionをインポートする
from sklearn.linear_model import LinearRegression
# ダミーデータの作成(実際のデータでは株価の終値を使用)
# 株価の終値データを仮に設定して、予測モデルの入力データとして使用する
data = np.array([100, 102, 101, 105, 107, 108, 110, 115, 120, 125, 130, 128, 129, 133, 135,
138, 140, 145, 150, 155, 160, 158, 159, 161, 162, 164, 168, 170, 172, 175])
# 過去30日間のデータから予測モデルの学習用データを作成
# Xは、過去29日間の株価終値のデータを一つの配列にまとめたもの
# yは、Xの次の日に対応する終値データ
X = np.array([data[i:i+29] for i in range(len(data) - 30)])
y = data[30:]
# 線形回帰モデルのインスタンスを作成(予測モデルの準備)
model = LinearRegression()
# モデルに学習データX(入力)とy(出力)を適用して、回帰分析モデルを構築
model.fit(X, y)
# 次の日の終値を予測
# 最新の29日間のデータ(data[-29:])を使用して、翌日の終値を予測
next_day_prediction = model.predict([data[-29:]])
# 予測結果を表示
print("予測される次の日の終値:", next_day_prediction)
文法要素の解説
import numpy as np
numpyは、大量の数値データを効率的に扱えるPythonのライブラリです。このコードでは、numpyを「np」という短い名前で呼び出せるようにしています。numpyの関数を使う際に、np.array()のように書けるため、コードが短く書きやすくなります。
from sklearn.linear_model import LinearRegression
sklearn(サイキットラーン)は、機械学習を使った分析や予測を行うためのPythonライブラリです。linear_modelモジュールには、LinearRegressionという回帰モデルが含まれており、あるデータから次の値を予測するために使います。ここでは、このモデルを使って株価の終値を予測します。
data = np.array([…])
配列dataを作成し、株価のダミーデータ(仮のデータ)を設定しています。np.arrayはnumpyの関数で、配列を作るために使用されます。この配列には、仮想の株価の終値が入っています。
X = np.array([data[i:i+29] for i in range(len(data) – 30)])
このコードの目的は、data
という時系列データ(例えば株価のデータ)から、過去29日分の情報を1つのまとまりとして、機械学習モデルなどで使えるように加工することです。
このコードでは「リスト内包表記」と呼ばれる方法を使い、データの一部を順に取り出して np.array
にまとめています。
1. data の理解
data
には、株価のように時間とともに並んだ連続的なデータが格納されています。例えば、data
が[100, 102, 105, 108, ...]
のように株価の履歴を持っているとします。- このデータを元に、モデルが予測に使える形に変形するのが目的です。
2. range(len(data) - 30) の部分
len(data)
はdata
の要素数、つまりデータ全体の長さを表します。range(len(data) - 30)
は、そのデータの長さから30を引いた範囲を生成します。- 例えば、
data
が100個のデータから構成されているとき、range(len(data) - 30)
はrange(70)
、つまり0から69までの数字を順に生成します。
3. for i in range(len(data) - 30) の部分
for i in range(len(data) - 30)
は、i
という変数が順番に0, 1, 2, ... 69
という値を取ります。- これによって、スライスする開始位置(
i
)を少しずつずらしながら、data
の一部を取り出していきます。
4. data[i:i+29] の部分
data[i:i+29]
は、「i
番目からi+29
番目までのデータ」を取り出す部分です。Pythonのスライス記法を使っており、start:end
の形式で書かれています。- スライス記法では、
start
は開始位置を示し、end
は終了位置を示しますが、終了位置は含まれません。 - 例えば、
i=0
のときはdata[0:29]
、つまり最初から29個目の要素(28番目の要素まで)を取り出します。 i
が1増えると、次にdata[1:30]
として1番目から29個の要素を取り出します。これを繰り返して、過去29日分のデータを少しずつずらしながら抽出していくのです。
5. [] を使ったリスト内包表記
[data[i:i+29] for i in range(len(data) - 30)]
は「リスト内包表記」と呼ばれる構文で、新しいリストを作るための便利な方法です。- このリスト内包表記を使うと、ループを使って新しいリストに要素を追加する操作が簡潔に書けます。
- この場合、
data[i:i+29]
をi
を0から順に変えながら取得し、それを新しいリストにまとめています。この結果として「過去29日間のデータ」が複数セット格納されたリストが出来上がります。
6. np.array() で NumPy 配列に変換
- 最後に
np.array()
を使って、リスト内包表記で作成されたリストをNumPy配列に変換します。 - NumPy (
np
) は数値計算を効率的に行うためのPythonライブラリで、機械学習やデータ分析で頻繁に使われます。 np.array()
にすることで、このデータを機械学習モデルに使いやすい形式に変換できます。また、NumPyの配列にすると、効率的な数値操作が可能です。
7. i:i+29 のスライス記法について
i:i+29
はスライス記法で、リストや配列の中から部分的なデータを抜き出すために使います。- この記法を使うことで、
data
の連続した部分(例えば過去29日分のデータ)を取り出せます。i
が少しずつ変わることで、data
全体を少しずつずらしながらスライスすることができます。 - この意図は、過去29日間のデータをまとめて取り出すことで、その情報を基に次の予測などに使えるようにすることです。
この箇所の記述の流れまとめ
data
という時系列データを用意します(株価などの過去の履歴)。- 過去29日間のデータを取り出して、それを順に並べたリストをリスト内包表記で作成します。
- 最後にそのリストを NumPy の配列に変換し、効率的に計算などに使えるようにします。
このコードを使うと、機械学習のモデルに入力するために、データを「過去29日分ずつのまとまり」に変換することができます。これにより、株価などの過去のデータを基に未来を予測するための準備ができます。
y = data[30:]
yには、Xの次の日にあたる終値を入れています。データ全体のうち、30日目から最後までのデータが入ります。Xに対応する正解の値(翌日の終値)として使われます。
model = LinearRegression()
LinearRegressionのインスタンス(モデル)を作成します。
LinearRegressionは、入力データ(特徴量)と出力データ(ターゲット)の間に線形の関係があると仮定して、最適な直線を見つけることでデータを予測するためのものです。
例えば、過去の株価の動きから未来の株価を予測するための「予測ツール」のように使われます。このモデルを使うことで、データの傾向を学習し、未来の値を予測することができます。
ここで作成したモデルに、Xとyを使って学習をさせる準備をしています。
model.fit(X, y)
model.fit(X, y) fitメソッドは、モデルに学習を行わせるためのものです(モデルが過去のデータから学んで未来を予測できるようにする作業)。Xを入力データ、yを出力データとして、回帰モデルにデータを当てはめ、学習を行っています。これにより、モデルがデータの関係性を学び、次の日の終値を予測できるようになります。
next_day_prediction = model.predict([data[-29:]])
predict
メソッドは、学習済みのモデル(model
)に新しいデータを与えて、その結果を予測するためのものです。
-29:
という表記は、リストの末尾から数えて29個の要素を取り出すという意味です。
Pythonでは、リストのインデックスに負の数を使うと後ろから数えることができます。例えば、data[-1]
はリストの最後の要素を、data[-29:]
はリストの末尾から29個分の要素をすべて取り出すことを意味します。このようにして最新の29日間のデータを取得し、モデルに入力として渡しています。
- 関数名:
model.predict()
- 引数:
[data[-29:]]
(この部分は、最新の29日間のデータをリストとして与えています) - 役割: 最新の29日間のデータを使って次の日の株価終値を予測します。
data[-29:]
は、data
配列の末尾から29個のデータを取り出すスライス記法です。このデータを入力として model.predict()
に渡し、翌日の終値を予測しています。
print(“予測される次の日の終値:”, next_day_prediction)
print関数を使って、予測結果を出力しています。予測される終値が表示され、次の日の終値を確認することができます。
システムトレーダーにとっての機械学習のメリットと今後の展望
機械学習を使うと、過去のデータから傾向をつかみやすくなり、取引の精度が向上します。また、今後の技術進歩によってより精度の高い予測や、リアルタイムに近い分析も期待されています。システムトレードにおける機械学習の可能性は広がっており、新たなチャンスを生む手段として注目されています。