回帰分析とは何か
回帰分析とは、データの中にある「パターン」や「傾向」を見つけ出し、将来の値を予測する方法です。例えば、過去の株価データがあれば、その変動から未来の株価がどうなるかを予測するのに使います。回帰分析は、特に「連続する数値の予測」に強い手法です。
回帰分析で何がわかるのか
回帰分析を使うと、例えば次のようなことがわかります。
これらを予測することで、取引タイミングを見極める判断材料として役立ちます。
システムトレードにおける回帰分析の活用方法
システムトレードでは、回帰分析を使って以下のような予測を行い、売買判断の参考にします。
株価の予測
過去の株価データから「次の日」や「翌週」の株価がどう動くかを予測します。上がりそうであれば「買い」、下がりそうであれば「売り」といった判断ができるようになります。
インジケータの予測
システムトレードでは、移動平均線やボリンジャーバンドなどのインジケータもよく使います。回帰分析を使えば、インジケータが「この先上がるのか下がるのか」を予測できるため、売買のタイミングを計るのに便利です。
回帰分析の種類とその違い
回帰分析にはさまざまな種類があり、データの特徴や目的に応じて使い分けます。以下は、システムトレードでよく使われる回帰分析の種類です。
単回帰分析
単回帰分析は、1つの変数(例えば過去の株価データ)から未来の値を予測する方法です。データが少ない場合や簡単な予測がしたい場合に役立ちます。
※単回帰分析についての詳細は下記の記事をご参照ください。
重回帰分析
重回帰分析は、複数の変数(例えば株価と出来高など)を使って予測する方法です。複数の要因が絡む複雑なデータを扱う際に有効です。
※重回帰分析についての詳細は下記の記事をご参照ください。
非線形回帰分析
非線形回帰分析は、データが直線的でない複雑な動きをする場合に使います。株価や為替レートは単純な直線では表せないことが多いため、非線形回帰を使うとより正確に予測できることがあります。
※非線形回帰分析についての詳細は下記の記事をご参照ください。
システムトレードにおける回帰分析の流れ
ここでは、システムトレードで回帰分析を使って予測を行う一般的な流れを紹介します。
データの収集
まずは、株価やインジケータなど、分析に必要なデータを集めます。過去1年分、あるいは数年分のデータがあると精度の高い予測が可能です。
データの整理(前処理)
集めたデータをそのまま使うのではなく、扱いやすい形に整えます。データの中に「抜けている値」があれば、その部分を補完したり、データ全体を数値にそろえるなどの処理を行います。
モデルの構築
次に、回帰分析を使って予測のための「モデル」を構築します。モデルとは、データの特徴をもとにした「予測するためのルール集」です。このモデルにデータを入力することで、未来の値を予測します。
テストと評価
作成したモデルが正しく働くかをテストします。過去のデータを使って予測させ、どれだけ当たっていたかを確認することで、モデルの精度を評価します。予測精度が高ければ実際の取引に活用できます。
回帰分析を使ったシステムトレードの例
最後に、実際に回帰分析を使って株価のトレンドを予測する簡単な例を紹介します。この例では、Pythonを使って過去の株価データから「次の日の終値」を予測するモデルを構築します。
株価予測のコード例
以下のコードは、過去の終値データを使って次の日の株価終値を予測する簡単な例です。
pythonコードをコピーする# 必要なライブラリをインポート
import numpy as np
from sklearn.linear_model import LinearRegression
# ダミーデータを作成(実際のデータでは株価の終値を使用)
data = np.array([100, 102, 101, 105, 107, 108, 110, 115, 120, 125, 130, 128, 129, 133, 135, 138, 140, 145, 150, 155,
160, 158, 159, 161, 162, 164, 168, 170, 172, 175])
# 30日分のデータを使って次の日の終値を予測する
X = np.array([data[i:i+29] for i in range(len(data) - 30)])
y = data[30:]
# モデルの作成
model = LinearRegression()
model.fit(X, y)
# 次の日の終値を予測
next_day_prediction = model.predict([data[-29:]])
print("予測される次の日の終値:", next_day_prediction)
コードの解説
このコードでは、過去の株価データ(変数名:data
)を使って、次の日の終値を予測するための線形回帰モデルを作成しています。
最初に、numpy
とscikit-learn
のLinearRegression
をインポートします。numpy
はデータの操作に便利な数値計算ライブラリで、LinearRegression
は回帰分析のためのクラスです。
data
は過去の株価終値を保持する配列です。このデータを使って未来の株価を予測します。
次に、X
という変数を作成しています。X
は「予測のための入力データ」で、29日間の株価データのまとまりを格納した二次元配列です。具体的には、X
はdata
の中から連続した29日分のデータを取り出し、複数の「過去の期間」を予測に利用できるようにします。このようにして、複数の期間のデータを使うことで、より精度の高い予測が可能になります。
y
は「教師データ」として使用される変数で、data
の30日目以降の値が格納されています。y
は、X
に対応する正解データとして使われ、モデルに「この入力にはこの答えが正しい」という情報を与える役割を果たします。
次に、LinearRegression()
クラスを使ってmodel
という名前の「線形回帰モデル」を作成します。これは、過去のデータから未来の値を予測するための数学的なルールを作るものです。model.fit(X, y)
を実行することで、モデルがX
とy
の関係性を学習します。fit
というメソッドは、データを使ってモデルを訓練(学習)するために使われます。
最後に、next_day_prediction
という変数を使って、次の日の終値を予測します。model.predict([data[-29:]])
を使うことで、直近の29日間のデータから次の日の終値を予測しています。このpredict
というメソッドは、学習したモデルにデータを入力して、その結果を予測するために使います。
print("予測される次の日の終値:", next_day_prediction)
で予測結果を画面に表示します。このようにして、過去のデータから未来の株価を予測することができます。
このように、データや目的に応じて、より複雑な回帰分析手法を使うことも可能です。
まとめ
回帰分析は、システムトレードにおいて「未来の価格を予測する」ための重要な手法です。
過去のデータから傾向をつかみ、次の取引タイミングを予測するのに役立ちます。回帰分析にはさまざまな種類があり、用途に合わせて使い分けることがポイントです。