システムトレードの為の非線形回帰分析入門

Python

機械学習を利用して、システムトレードの戦略分析をしてみたいと考えている方に向けて、今回の記事では、特に「非線形回帰分析」について解説します。
まずは基本的な概念から入り、実際にどうやって使われるのかを具体例を交えながら説明していきます。
<参照>

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非線形回帰分析とは?

回帰分析の基礎

回帰分析」というのは、あるデータから他のデータを予測するための方法です。例えば、毎日の気温とアイスクリームの売り上げデータを持っているとします。このデータをもとに、「気温が上がるとどれくらいアイスクリームが売れるか」を予測したいときに使うのが回帰分析です。

通常、簡単な回帰分析は「直線」を使ってデータを表します。この直線を使った回帰を「線形回帰」と呼びます。気温と売り上げが関係しているのを示すとき、例えば「気温が上がると売り上げも増える」というようなシンプルな関係を直線で表すことができます。

非線形回帰とは?

しかし、現実はもっと複雑な要因が組み合わさって結果が生じます。

たとえば、気温がある程度までは上がるとアイスクリームの売り上げが増えるけど、あまりに暑すぎると逆に減ってしまう、というような場合があります。このように、データの関係が「曲がっている」場合には直線ではうまく表せません。このような「曲がった関係」をモデル化するのが「非線形回帰」です。

非線形回帰は、曲がりくねった線を使ってデータを表すため、より複雑なデータの関係をキャプチャすることができます。

システムトレードと非線形回帰

システムトレードとは?

システムトレードというのは、あらかじめ決められたルールに従って自動的に売買を行うトレードのことです。このようなトレードでは、どんなタイミングで売買するのが良いのかを決めるために、過去の価格データを使って分析を行います。

※詳細については下記の記事をご参照ください。

非線形回帰分析を使うことで、システムトレードにおいて価格の動きと売買のタイミングの関係をより詳しく理解することができます。たとえば、価格が「曲がったパターン」で動く場合、非線形回帰分析を使うことでそのパターンをより正確に予測することができるようになります。

非線形回帰の種類

多項式回帰

「多項式回帰」は、直線ではなく「曲線」でデータを表す方法です。
※多項式とは、複数の項を持つ式のことを指し、各項は変数べき乗とそれに係数を掛けた形で表されます。たとえば、次のような式で表すことができます:

  • 売り上げ = 3 × 気温^2 + 5 × 気温 + 10

この式には「気温^2」という項が含まれています。
※ここで「項」とは、数式の中で足し算や引き算で区切られている各部分のことです。
この「2乗」がついていることで、データの関係を曲がった形で表現することができるようになります。このように「次数」が増えるほど、より複雑な関係を表すことができます。

ガウス過程回帰

もう一つの方法として「ガウス過程回帰」があります。これは少し難しいかもしれませんが、簡単に言うと、データがどのようなパターンでもフィットできるような「なめらかな曲線」を使って表す方法です。この方法は、価格がどのように変動するかがわからないときにも強力な分析ツールになります。

非線形回帰を使ったシステムトレードの実例

ここで、非線形回帰を使ったシステムトレードの具体的な例を見てみます。

例:価格の予測

例えば、ある通貨ペア(例えばUSD/JPY)の過去の価格データがあるとします。このデータを使って、次の価格がどのように動くかを予測したいとします。ここで非線形回帰を使うと、価格が上昇したり下落したりする「波のパターン」を見つけ出すことができます。

これに基づいて、「価格があるレベルに達したら買い」「別のレベルに達したら売り」というルールを設定してシステムトレードを行うことができます。

非線形回帰を使うメリット

非線形回帰を使うと、以下のようなメリットがあります。

  • 複雑な価格の動きもキャプチャできる。
  • 単純な直線では表せないパターンを見つけることができる。

これによって、トレードの精度が上がり、より利益を上げやすくなる可能性があります。

非線形回帰分析を使うためのツール

Pythonと機械学習ライブラリ

非線形回帰分析を行うには「Python」というプログラミング言語と、その中の「scikit-learn(サイキットラーン)」という機械学習ライブラリを使うのが一般的です。このツールを使うと、非線形回帰モデルを作成し、データを分析することができます。

例えば、以下のようなコードで非線形回帰を実装できます(簡単な例):

import numpy as np  # 数値計算用のライブラリをインポートします
from sklearn.preprocessing import PolynomialFeatures  # データを多項式に変換するための関数をインポートします
from sklearn.linear_model import LinearRegression  # 線形回帰モデルをインポートします


# サンプルデータ
気温 = np.array([10, 15, 20, 25, 30]).reshape(-1, 1)
売り上げ = np.array([100, 150, 200, 260, 310])

# 多項式回帰モデルを作る
poly = PolynomialFeatures(degree=2)  # 2次の多項式
気温_poly = poly.fit_transform(気温)  # 第1引数は元の気温データで、2次の多項式に変換するために使用されます。

model = LinearRegression()
model.fit(気温_poly, 売り上げ)  # 第1引数は多項式に変換された気温データで、第2引数は売り上げデータです。これを使ってモデルを訓練します。

# 予測してみる
予測 = model.predict(poly.transform([[27]])  # 第1引数は27度という新しい気温データを多項式に変換するために使用されます。)
print(予測)  # 27度の時の売り上げを予測

サンプルコードの詳細な解説

1. ライブラリのインポート

まず、Pythonのコードを書く際には必要なライブラリをインポートします。

  • import numpy as np:numpyは数値計算を簡単にするためのライブラリで、データの操作によく使われます。ここではnpという短い名前で使えるようにしています。
  • from sklearn.preprocessing import PolynomialFeatures:scikit-learnという機械学習ライブラリからPolynomialFeaturesという関数をインポートします。これを使うと、データを多項式の形に変換できます。
  • from sklearn.linear_model import LinearRegression:同じくscikit-learnからLinearRegressionという関数をインポートします。この関数を使って回帰分析を行います。

2. サンプルデータの準備

次に、サンプルデータを準備します。

  • 気温 = np.array([10, 15, 20, 25, 30]).reshape(-1, 1):ここではnumpyのarrayという関数を使って、気温のデータを作成しています。reshape(-1, 1)という部分は、データを縦に並べた1列の形に変換するためのものです。-1は自動で行数を決定し、1は1列の形にすることを意味しています。
  • 売り上げ = np.array([100, 150, 200, 260, 310]):売り上げのデータも同様に作成しています。

3. 多項式回帰モデルの作成

次に、多項式回帰モデルを作成します。

  • poly = PolynomialFeatures(degree=2):PolynomialFeaturesはデータを多項式に変換するために使います。ここではdegree=2として、2次の多項式を作成しています。これは「気温の2乗」のように、曲がった関係を表現するためです。
  • 気温_poly = poly.fit_transform(気温):fit_transformメソッドを使って、元の気温データを2次の多項式に変換します。これで、元のデータに「気温の2乗」の項が追加されます。

4. 回帰モデルの訓練

次に、回帰モデルを訓練します。

  • model = LinearRegression():LinearRegressionという関数を使って、線形回帰モデルを作成します。このモデルは、与えられたデータに基づいて直線や曲線をフィットさせるために使用されます。
  • model.fit(気温_poly, 売り上げ):fitメソッドを使って、気温の多項式データと売り上げデータを使ってモデルを訓練します。これにより、データに最もよく合う曲線を見つけます。

5. 売り上げの予測

最後に、売り上げを予測してみます。

  • 予測 = model.predict(poly.transform([[27]])):ここではpoly.transform([[27]])を使って、27度の気温を2次の多項式に変換し、それをpredictメソッドに渡して売り上げを予測しています。第1引数は、新しい気温データ(27度)で、これを多項式に変換するために使用されます。
  • print(予測):print関数を使って、予測した売り上げを表示します。

このコード全体を通じて、気温と売り上げの関係を2次の多項式を使ってモデル化し、新しい気温(27度)の時の売り上げを予測するという流れになっています。

まとめ

非線形回帰分析は、システムトレードにおいて複雑なデータの関係をモデル化するのに役立つ強力なツールです。シンプルな直線では表現できないような価格の動きやトレンドを捉えることで、より精度の高いトレードを実現することができます。

次に学ぶべきステップとしては、Pythonを使って実際に非線形回帰のコードを書いてみることです。そして、自分でデータを使いながらトレードの予測を試してみましょう。これによって、システムトレードの世界がさらに広がるはずです。

補足:サンプルコードで使ったライブラリ、関数、メソッドについて

numpy

  • 働きや機能: numpyは数値計算用のライブラリで、大規模なデータ操作を効率的に行うことができます。
  • 主要な関数メソッド: array関数はリストなどのデータを配列(Array)に変換するために使われます。
  • 引数戻り値:
    • array(data): dataはリストなどの配列に変換したいデータ。戻り値はnumpyの配列オブジェクト。

PolynomialFeatures

  • 働きや機能: PolynomialFeaturesは、入力データを多項式に変換するために使います。これにより、線形モデルで非線形の関係を表現することができます。
  • 主要な関数メソッド: fit_transformはデータを多項式に変換します。
  • 引数戻り値:
    • fit_transform(X): Xは変換したいデータで、戻り値は多項式に変換されたデータです。

LinearRegression

  • 働きや機能: LinearRegressionは、データに基づいて最適な直線または曲線を求めるためのモデルです。
  • 主要な関数メソッド:
    • fit(X, y): モデルを訓練します。
    • predict(X): 入力データに対して予測を行います。
  • 引数戻り値:
    • fit(X, y): Xは説明変数(特徴量)、yは目的変数(ターゲット値)です。戻り値はありませんが、モデルが訓練されます。
    • predict(X): Xは予測したいデータで、戻り値は予測結果です。

reshape

  • 働きや機能: reshapeは、配列の形状を変更するためのメソッドです。多次元配列の形を変えることができます。
  • 引数戻り値:
    • reshape(-1, 1): 第1引数の-1は行数を自動的に決定し、第2引数の1は列数を指定します。戻り値は、新しい形状に変換された配列です。

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