OrderCalcMargin関数の働き・役割
OrderCalcMargin関数は、指定された注文の種類に対して現在の市場環境で必要な証拠金を計算するために使用されます。
※証拠金とは、金融取引を行う際に必要となる担保金のことです。取引を開始するために、取引口座に一定の金額を預ける必要があります。この金額は、取引のリスクを管理し、取引が実行されるための保証として機能します。証拠金は、取引の規模やレバレッジ比率によって異なります。
この計算には、未決算の注文や未決済ポジションは考慮されません。結果として得られる証拠金の値は、口座の預金通貨で表示されます。この関数を使用することで、計画された取引操作に必要な証拠金を事前に評価することができます。
OrderCalcMargin関数は、以下のようなシナリオで役立ちます。
この関数は、正確な証拠金計算を通じてリスク管理を行い、取引計画を立てる上で非常に重要な役割を果たします。
OrderCalcMargin関数の引数について
OrderCalcMargin関数の引数構成は以下の通りです。
bool OrderCalcMargin(
ENUM_ORDER_TYPE action, // 注文の種類
string symbol, // 銘柄名
double volume, // ボリューム
double price, // 始値
double& margin // 証拠金取得に使用される変数
);
第1引数: action
注文の種類を指定します。この引数はENUM_ORDER_TYPE列挙型の値を取ります。主な注文の種類には、新規買い注文(ORDER_TYPE_BUY)、新規売り注文(ORDER_TYPE_SELL)、買いリミット注文(ORDER_TYPE_BUY_LIMIT)、売りリミット注文(ORDER_TYPE_SELL_LIMIT)、買いストップ注文(ORDER_TYPE_BUY_STOP)、売りストップ注文(ORDER_TYPE_SELL_STOP)などがあります。
第2引数: symbol
取引対象の銘柄名を文字列で指定します。例えば、EURUSDやGBPJPYなどのシンボル(特定の文字や記号)を指定します。
第3引数: volume
取引のボリュームを指定します。ボリュームはロット単位で表され、通常は少数点以下の値を取ることができます。
第4引数: price
取引の始値を指定します。これは取引が開始される価格であり、市場の現在価格を反映する必要があります。
第5引数: margin
計算された証拠金の値が格納される変数です。関数が成功すると、この変数に必要な証拠金の値が参照渡しで格納されます。
※参照渡しについては↓の記事をご覧ください。
ENUM_ORDER_TYPEについて
ENUM_ORDER_TYPEとは、MQL5で使用される注文の種類を示す列挙型です。各注文の種類は特定の識別子で表され、それぞれの注文方法に対応しています。
ORDER_TYPE_BUY
成行買い注文。現在の市場価格で即時に買い注文を実行します。
ORDER_TYPE_SELL
成行売り注文。現在の市場価格で即時に売り注文を実行します。
ORDER_TYPE_BUY_LIMIT
買い指値注文。指定した価格以下になった時に買い注文を出します。相場が反転して、上昇トレンドに入る事を想定とした買い注文になります。
ORDER_TYPE_SELL_LIMIT
売り指値注文。指定した価格以上になった時に売り注文を出します。相場が反転して、下落トレンドに入る事を想定とした売り注文になります。
ORDER_TYPE_BUY_STOP
買い逆指値注文。指定した価格以上になった時に買い注文を出します。上昇のトレンドがそのまま継続する事を想定した買い注文になります。
ORDER_TYPE_SELL_STOP
売り逆指値注文。指定した価格以下になった時に売り注文を出します。下落のトレンドがそのまま継続する事を想定した売り注文になります。
ORDER_TYPE_BUY_STOP_LIMIT
注文価格に達すると、未決の買い指値注文はストップリミット価格で出されます。これは、指定した価格以上になった時に、リミット買い指値注文を発行します。ブレイクアウトした後に、一旦戻りの動きが入る事を想定した買い注文になります。
ORDER_TYPE_SELL_STOP_LIMIT
注文価格に達すると、未決の売り指値注文はストップリミット価格で出されます。これは、指定した価格以下になった時に、その価格で売り指値注文を発行します。
ブレイクアウトした後に、一旦戻りの動きが入る事を想定した売り注文になります。
ORDER_TYPE_CLOSE_BY
ポジションを反対のポジションで決済するための注文。既存のポジションを相殺するために使用します。
OrderCalcMargin関数の戻り値について
OrderCalcMargin関数は、計算が成功した場合にtrueを返し、失敗した場合にはfalseを返します。この関数の主要な目的は、指定された注文に必要な証拠金を計算し、その値をmargin変数に格納することです。
戻り値の詳細
- true: 計算が成功し、証拠金の値がmargin変数に格納されました。
- false: 計算が失敗しました。この場合、GetLastError関数を使用してエラーの詳細を取得することができます。
OrderCalcMargin関数を使う際の注意点
証拠金の計算は未決算の注文や未決済ポジションを考慮しないため、実際の取引状況とは異なる場合があります。このため、計算結果は参考値として利用し、実際の取引時には常に最新の口座状況を確認することが重要です。
計算結果は市場の変動や口座の設定に大きく影響を受けるため、同じ条件でも異なる結果が得られることがあります。特に、市場が急激に変動している場合や、取引する銘柄のスプレッドが広がっている場合には注意が必要です。
OrderCalcMargin関数は証拠金を計算するための変数を参照渡しで受け取ります。このため、関数呼び出し後にこの変数の値を確認することで、計算結果を取得することができます。
OrderCalcMargin関数がfalseを返した場合、エラーの詳細を取得するためにGetLastError関数を使用することが推奨されます。これにより、証拠金計算に失敗した原因を特定し、適切な対策を講じることができます。
OrderCalcMargin関数を使ったサンプルコード
以下は、OrderCalcMargin関数を使用して指定された注文に対して必要な証拠金を計算するサンプルコードです。
void OnStart()
{
// 計算に使用するパラメータを設定
ENUM_ORDER_TYPE orderType = ORDER_TYPE_BUY; // 成行買い注文
string symbol = "EURUSD"; // 銘柄名
double volume = 1.0; // ボリューム(ロット)
double price = 1.1200; // 始値
double margin; // 証拠金を格納する変数
// 証拠金を計算
bool result = OrderCalcMargin(orderType, symbol, volume, price, margin);
// 計算結果をチェック
if(result)
{
// 計算が成功した場合、証拠金の値をエキスパートログに出力
Print("必要な証拠金: ", margin);
}
else
{
// 計算が失敗した場合、エラーコードをエキスパートログに出力
Print("証拠金の計算に失敗しました。エラーコード: ", GetLastError());
}
}
サンプルコードに使われた関数や文法要素の簡単な解説
OnStart関数
OnStart関数は、スクリプトが実行されるときに最初に呼び出される関数です。この関数内で、証拠金の計算と結果の出力を行います。
計算に使用するパラメータの設定
// 計算に使用するパラメータを設定
ENUM_ORDER_TYPE orderType = ORDER_TYPE_BUY; // 成行買い注文
string symbol = "EURUSD"; // 銘柄名
double volume = 1.0; // ボリューム(ロット)
double price = 1.1200; // 始値
double margin; // 証拠金を格納する変数
この部分では、証拠金を計算するための必要なパラメータを設定します。
- orderTypeは注文の種類を示し、ここでは成行買い注文を指定しています。
- symbolは取引する銘柄名を指定しています。
- volumeは取引のボリュームをロット単位で指定します。
- priceは取引開始時の価格を設定します。
- marginは計算された証拠金の値を格納するための変数です。
OrderCalcMargin関数の呼び出し
// 証拠金を計算
bool result = OrderCalcMargin(orderType, symbol, volume, price, margin);
ここでは、OrderCalcMargin関数を呼び出して証拠金を計算します。引数として、前述のパラメータを渡します。関数は、計算が成功した場合にtrueを返し、失敗した場合にはfalseを返します。計算結果はmargin変数に格納されます。
計算結果のチェック
// 計算結果をチェック
if(result)
{
// 計算が成功した場合、証拠金の値をエキスパートログに出力
Print("必要な証拠金: ", margin);
}
else
{
// 計算が失敗した場合、エラーコードをエキスパートログに出力
Print("証拠金の計算に失敗しました。エラーコード: ", GetLastError());
}
ここでは、OrderCalcMargin関数の戻り値であるresultをチェックしています。
- if文は、resultがtrueの場合に実行されるブロックを指定します。この場合、計算された証拠金の値をエキスパートログに出力します。
- else文は、resultがfalseの場合に実行されるブロックを指定します。この場合、証拠金の計算が失敗したことを示し、GetLastError関数を使用してエラーコードをエキスパートログに出力します。
Print関数
Print関数は、指定されたメッセージをエキスパートログに出力します。このサンプルコードでは、証拠金の値やエラーコードを出力するために使用されています。
GetLastError関数
GetLastError関数は、最後に発生したエラーコードを取得するための関数です。OrderCalcMargin関数が失敗した場合に、この関数を使用してエラーの詳細を取得します。