Resize関数の働き・役割
Resize関数は、行列やベクトルの形状やサイズを変更するために使用されます。
この関数を使うことで、行列の行数や列数、またはベクトルの要素数を新しいサイズに調整できます。調整された行列やベクトルは、元のデータを基にその場で変更され、新しいコピーは作成されません。
この関数では、行列のサイズ変更において行ごとに処理が行われます。新しく追加される行や列の要素は特に値が定義されないため、使用する際には注意が必要です。また、サイズを小さくする場合、不要な行や列が削除されます。
このように、Resize関数はデータ構造の大きさを動的に変更するための便利なツールです。行列やベクトルの形状を柔軟に変更したい場合に適しています。
Resize関数の引数について
Resize関数は、行列(matrix)とベクトル(vector)それぞれで異なる引数構成を持っています。それぞれの詳細について説明します。
行列(matrix::Resize)の引数
bool matrix::Resize(
const ulong rows, //
const ulong cols, // 新しい列数
const ulong reserve=0 // アイテムの予約
);
- rows
新しい行数を指定します。この数値によって行列の行が増減します。増えた場合、新しい行の要素は未定義の値を持ちます。 - cols
新しい列数を指定します。この数値によって行列の列が増減します。増えた場合、新しい列の要素は未定義の値を持ちます。 - reserve(初期値0)
事前に確保する要素数を指定します。この引数はパフォーマンスの最適化に使用されますが、省略可能です。
ベクトル(vector::Resize)の引数
bool vector::Resize(
const ulong size, // 新しいサイズ
const ulong reserve=0 // アイテムの予約
);
- size
新しいベクトルの要素数を指定します。この値によってベクトルのサイズが変更されます。サイズが増えた場合、新しい要素の値は未定義の値を持ちます。 - reserve(初期値0)
ベクトルのメモリ確保量を指定します。行列の場合と同様、パフォーマンス最適化のための引数で、省略可能です。
Resize関数の引数は、行列やベクトルの新しい形状を決める重要なパラメータです。指定する値によって、元のデータ構造がどのように変更されるかが決まります。
Resize関数の戻り値について
Resize関数は、行列やベクトルのサイズ変更が成功したかどうかを示す値を返します。
- 成功時
サイズの変更が問題なく完了した場合は、true
を返します。これにより、指定したサイズへの変更が正常に適用されたことを確認できます。 - 失敗時
サイズ変更に失敗した場合は、falseを返します。失敗の原因としては、メモリ不足や無効な引数(負の値や不適切なサイズ指定)が考えられます。
戻り値を確認することで、Resize関数の処理が正しく実行されたかどうかを判断できます。エラー処理やデバッグのために、この戻り値を活用することが推奨されます。
Resize関数を使ったサンプルコード
以下にResize関数を使用した具体例を示します。この例では、行列(matrix)を作成し、Resize関数を使ってその形状やサイズを変更しています。
// OnStart関数はスクリプトの実行が開始された際に自動で呼び出されます
void OnStart()
{
// matrix型の変数matrix_aを定義し、初期値を設定します
// この行列は4行3列で構成され、それぞれの要素は整数で設定されています
matrix matrix_a = {{1,2,3}, {4,5,6}, {7,8,9}, {10,11,12}};
// 初期状態の行列をエキスパートログに出力します
Print("初期状態の行列 matrix_a:\n", matrix_a);
// Resize関数を使って行列を2行6列に変更します
matrix_a.Resize(2, 6);
// 変更後の行列をエキスパートログに出力します
Print("行列を2行6列にリサイズ:\n", matrix_a);
// Resize関数を使って行列を3行5列に変更します
matrix_a.Resize(3, 5);
// 変更後の行列をエキスパートログに出力します
Print("行列を3行5列にリサイズ:\n", matrix_a);
// Resize関数を使って行列を2行4列に変更します
matrix_a.Resize(2, 4);
// 変更後の行列をエキスパートログに出力します
Print("行列を2行4列にリサイズ:\n", matrix_a);
}
サンプルコードの解説
上記のコードでは、Resize関数を使った行列のサイズ変更を順を追って示しています。それぞれのステップを詳しく解説します。
matrix型の定義
まず、matrix型の変数matrix_aを定義しています。matrixは、MQL5で行列を扱うためのデータ型です。以下のコードではmatrix_aという名前の4行3列の行列を作成しています。
matrix matrix_a = {{1,2,3}, {4,5,6}, {7,8,9}, {10,11,12}};
ここで使用されている{{1,2,3}, {4,5,6}, {7,8,9}, {10,11,12}}は、行列の初期値を指定するリテラル(直接値を指定する構文)です。このコードにより、matrix_aは以下のような行列になります:
[[1, 2, 3]
[4, 5, 6]
[7, 8, 9]
[10, 11, 12]]
Print関数の使用
Print関数は、指定した文字列やデータをエキスパートログに出力するために使用されます。以下のコードでは、行列matrix_aの初期状態をログに出力しています。
Print("初期状態の行列 matrix_a:\n", matrix_a);
このように、行列やベクトルの中身を確認する際にPrint関数が役立ちます。
Resize関数の使用
Resize関数は、行列やベクトルの形状やサイズを変更します。このコードでは以下の3つのリサイズ操作を行っています。
1. 2行6列に変更
matrix_a.Resize(2, 6);
この操作では、行列の行数を2行、列数を6列に変更しています。この結果、元のデータが行ごとに詰め込まれ、新しい列には未定義の値が設定されます。ログには以下のような行列が表示されます:
[[1, 2, 3, 4, 5, 6]
[4, 5, 6, 10, 11, 12]]
2. 3行5列に変更
matrix_a.Resize(3, 5);
ここでは行数を3行、列数を5列に変更しています。元のデータが再配置され、新しい要素には未定義の値が割り当てられます。ログには以下のように表示されます:
[[1, 2, 3, 4, 5]
[4, 5, 6, 10, 11]
[11, 12, 3, 未定義値, 未定義値]]
3. 2行4列に変更
matrix_a.Resize(2, 4);
最後に行数を2行、列数を4列に変更します。この操作では、行列のデータが切り捨てられ、不要な部分が削除されます。ログに表示される行列は以下の通りです:
[[1, 2, 3, 4]
[4, 5, 6, 10]]
行列操作と注意点
Resize関数では、行列をその場で変更し、コピーは作成しません。したがって、元のデータ構造をそのまま使用する際には注意が必要です。また、新しく追加された要素や列は未定義の値を持つため、それを前提として使用する場合は適切な初期化処理を行う必要があります。
Resize関数を使ってEAを作る際のアイディア
Resize関数を活用することで、取引データやインジケータの動的管理を効率化したエキスパートアドバイザ(EA)を構築できます。以下に具体的なアイディアを挙げて説明します。
1.動的な取引データの記録
Resize関数を使用すれば、取引の履歴データや分析用のデータを行列として保存し、そのサイズを動的に変更できます。例えば、取引の回数が増えるたびに行列の行数を増やしてデータを追加する仕組みを作ることができます。
アイディアの例:
2. カスタムインジケータの計算に使用
Resize関数を使えば、カスタムインジケータの計算用データを効率的に管理できます。データサイズを柔軟に変更することで、異なる時間枠やシンボルに対応できるインジケータを作成できます。
アイディアの例:
3. 複数通貨ペアの統計分析
複数の通貨ペアの統計データを行列で管理し、Resize関数でその形状を動的に変更することで、EAが複数通貨の相関や分散をリアルタイムで計算することが可能になります。
アイディアの例:
- 各通貨ペアの価格変動データを列として保存し、追加されるペアごとに列を動的に増やす。
- 相関係数や分散を計算し、高い相関を持つ通貨ペアの取引戦略を生成。
4. 機械学習アルゴリズムの入力データ作成
Resize関数を活用して、機械学習モデルのトレーニングデータを行列として管理できます。価格データやインジケータの値を動的に保存することで、モデルの入力に適したデータセットを構築できます。
アイディアの例:
5. 最適化のためのパラメータ管理
EAの最適化過程で使用するパラメータを行列として記録し、Resize関数を利用して動的に管理することができます。これにより、パラメータの探索や結果の保存を効率化できます。
アイディアの例: