モメンタムとは?
モメンタムは驚くほどシンプルなインディケーターで
基準となる日時の価格と過去N期間前の価格との比率
を算出したものになります。
※MT5内臓のインディケーターではN期間のデフォルト値は「14」になっています。
過去の価格からの変化率で上昇トレンド、下降トレンドを見定めよう、という趣旨のもので、
100を上回っていたら、上昇トレンド
100を下回っていたら、下降トレンド
というざっくりとした切り分けができます。
※今回はMQL5コードの記述について解説するのが記事の本旨なので、割愛しますが、結構重要なインディケーターだと思っています。
今回は、このモメンタムの値を取得し、それをトレードシグナルとするEAを制作していきたいと思います
※モメンタムについての詳細は↓の記事をご参照ください
モメンタムの売買シグナルを取得するためのロードマップ
以下の手順でコードを記述していきます
<メインプログラム>
- エントリ-チェック関数の定義
Trade.mqhのインクルードとCTradeクラスのインスタンスの宣言
MQL5の基本発注プロセスである、
MqlTradeRequest構造体型変数にオーダー詳細を入力→OrderSend()
という流れは極めて煩雑で、記述ミスも起こりやすいです。
Trade.mqhファイルを呼び出して、CTradeクラスのインスタンスを宣言し、メインプログラムでの発注記述を簡略化できるようにします。
#include <Trade\Trade.mqh>
//標準ライブラリーのトレードファイルを使えるようにする
CTrade trade;
// CTradeクラスのインスタンスを宣言
エントリーシグナルを格納する変数を宣言
トレードシグナルはstring型(=文字列)で受け取るようにします。
トレードシグナルを生成する関数は後ほど、グローバル領域(関数の外の領域)に記述します。
//トレードシグナルを格納する変数を宣言
string entrySignal=CheckEntryBasedOnMomentum();
現在値の取得と正規化
正規化というのは、プログラムが取り扱うルールに則って値を整える作業
のことを言います。
ここで言う「プログラムが取り扱うルール」とは通貨ペアの価格を適切な桁数に整えることを指します。
通貨ペアに関する適切な桁数については、Digits関数(または定義済み変数_Digits)で取得できます。
正規化にはNormalizeDouble関数を用います。
//現在値の取得と正規化
double Ask=NormalizeDouble(SymbolInfoDouble(_Symbol,SYMBOL_ASK),_Digits);
double Bid=NormalizeDouble(SymbolInfoDouble(_Symbol,SYMBOL_BID),_Digits);
NormalizeDouble関数についてはコチラをご覧ください。
発注条件を記述
買い注文=「買いトレードシグナルを受け取り、ノーポジのとき」
売り注文=「売りトレードシグナルを受け取り、ノーポジのとき」
と定義します
★注意:以下のソースコードには発注回路が含まれています。
ソースコードの内容を試されるときは、必ずストラテジーテスターのバックテストモードか、
デモ口座お試しいただくようお願いします。
if(entrySignal=="Buy" && PositionsTotal()==0)
{
//買い注文
trade.Buy(0.01,NULL,Ask,Ask-100*_Point,Ask+100*_Point);
}//if(entrySignal=="Buy" && PositionsTotal()==0)
if(entrySignal=="Sell" && PositionsTotal()==0)
{
//売り注文
trade.Sell(0.01,NULL,Bid,Bid+100*_Point,Bid-100*_Point);
}//if(entrySignal=="Sell" && PositionsTotal()==0)
PositionsTotal関数についてはコチラをご覧ください。
エントリ-チェック関数の定義
メインプログラムでの記述が終わったので、グローバル領域にモメンタムを使った、トレードシグナル生成関数を定義していきます。
※グローバル領域とは関数の外の領域のことです。
//エントリ-チェック関数の定義
string CheckEntryBasedOnMomentum()
シグナル用の文字列変数を宣言
モメンタムをもとにして生成される売買トレードシグナルを格納する変数を用意します。
//トレードシグナル用の文字列変数を宣言
string signal="";
モメンタムの値を取得する記述を行う
MQL4とは違い、MQL5ではモメンタムの値の取得がiMomentum関数だけでは完結しません。
- 値を格納する配列の宣言
- iMomentum関数によるハンドル(モメンタムの値を取得する鍵のようなもの)の取得
- ArraySetAsSeries関数による、配列の時系列セット
- CopyBuffer関数による、モメンタムの値情報を配列にコピー
↑以上の工程をたどる必要があります。
//モメンタムの配列を格納する配列を用意
double PriceArray[];
//モメンタムを計算するハンドルを取得する
int MomentumDefinition=iMomentum(_Symbol,_Period,14,PRICE_CLOSE);
//データを時系列にセット
ArraySetAsSeries(PriceArray,true);
//取得したハンドルを使って、配列にモメンタムの計算値を格納
CopyBuffer(MomentumDefinition,0,0,3,PriceArray);
//配列に格納したモメンタムの値を正規化
double MomentumValue=NormalizeDouble(PriceArray[0],2);
シグナルを定義する記述を行う
売買トレードシグナルを発出する定義は
<買いトレードシグナル>
- モメンタムが100を下回ったとき
<売りトレードシグナル>
- モメンタムが100を上回ったとき
とします。
//モメンタムの値100を基準として売買トレードシグナルを発出
if(MomentumValue>100)signal="sell";
if(MomentumValue<100)signal="buy";
Comment("シグナル: ",signal);
//戻り値としてsignalを返す
return signal;
}//string CheckEntry()
全体のプログラムコード
全体のプログラムコードは以下のようになります。
#include <Trade\Trade.mqh>
//標準ライブラリーのトレードファイルを使えるようにする
CTrade trade;
// CTradeクラスのインスタンスを宣言
void OnTick()
{
//トレードシグナルを格納する変数を宣言
string entrySignal=CheckEntryBasedOnMomentum();
//現在値の取得と正規化
double Ask=NormalizeDouble(SymbolInfoDouble(_Symbol,SYMBOL_ASK),_Digits);
double Bid=NormalizeDouble(SymbolInfoDouble(_Symbol,SYMBOL_BID),_Digits);
if(entrySignal=="buy" && PositionsTotal()==0)
{
//買い注文
trade.Buy(0.01,NULL,Ask,Ask-100*_Point,Ask+100*_Point);
}//if(entrySignal=="buy" && PositionsTotal()==0)
if(entrySignal=="sell" && PositionsTotal()==0)
{
//売り注文
trade.Sell(0.01,NULL,Bid,Bid+100*_Point,Bid-100*_Point);
}//if(entrySignal=="sell" && PositionsTotal()==0)
}//void OnTick()
//+------------------------------------------------------------------+
//エントリ-チェック関数の定義
string CheckEntryBasedOnMomentum()
{
//トレードシグナル用の文字列変数を宣言
string signal="";
//モメンタムの配列を格納する配列を用意
double PriceArray[];
//モメンタムを計算するハンドルを取得する
int MomentumDefinition=iMomentum(_Symbol,_Period,14,PRICE_CLOSE);
//データを時系列にセット
ArraySetAsSeries(PriceArray,true);
//取得したハンドルを使って、配列にモメンタムの計算値を格納
CopyBuffer(MomentumDefinition,0,0,3,PriceArray);
//配列に格納したモメンタムの値を正規化
double MomentumValue=NormalizeDouble(PriceArray[0],2);
//モメンタムの値100を基準として売買トレードシグナルを発出
if(MomentumValue>100)signal="sell";
if(MomentumValue<100)signal="buy";
Comment("シグナル: ",signal);
//戻り値としてsignalを返す
return signal;
}//string CheckEntry()
プログラムコードの挙動は以下のようになります
最後までお読みいただきありがとうございました<m(__)m>
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