- MathExpm1関数の働き・役割
- MathExpm1関数の引数について
- MathExpm1関数の戻り値について
- MathExpm1関数を使ったサンプルコード
- サンプルコード解説1: グローバル領域での定義
- サンプルコード解説2: OnStart関数の中その1
- サンプルコード解説2:OnStart関数の中その1
- サンプルコード解説3:OnStart関数部分その2
- サンプルコード解説4:OnStart関数部分その3
- サンプルコード解説5: VectorArange関数(オリジナル関数)部分
- サンプルコード解説6: StopKeyPressed関数(オリジナル関数)部分
- サンプルコード解説7:CurvePlot関数(オリジナル関数)部分
- サンプルコード解説8:MakeAndSaveScreenshot関数(オリジナル関数)部分
- MathExpm1関数を使ってEAを作る際のアイディア
MathExpm1関数の働き・役割
MathExpm1関数は、数値「e」(ネイピア数、約2.718)を使って計算を行う関数です。「eのx乗から1を引いた値」を求めたいときに使います。この関数を使うと、単純に「eのx乗から1を引く」よりも、計算が正確になります。
例えば、次のような計算をする場合です。
- eを2乗して、その結果から1を引く。
- eを0.1乗して、その結果から1を引く。
通常の計算では、xが0に近づくと計算結果が少しずれてしまうことがありますが、MathExpm1関数はそのずれをなくすように工夫されています。そのため、より正確な結果が欲しいときにこの関数を使用します。
MathExpm1関数は、金融や物理学の数値シミュレーションなど、正確な計算が求められる場面で役立ちます。また、MQL5ではこの関数を使用することで、数学的な計算を効率よく行うことができます。
MathExpm1関数の引数について
double MathExpm1(
double value // eの塁乗指数
);
MathExpm1関数には、計算のために1つの引数が必要です。この引数は、計算に使う「指数(ある数を何回か掛け合わせること)」の値を指定します。
引数の詳細
- value
ここには「eの何乗にするか」を表す数値を入れます。
例えば、valueに2を指定すると、「eを2回掛けた値から1を引いた結果」を求めます。もしvalueに0.5を指定したら、「eを0.5乗(半分だけ掛け合わせた値)から1を引いた結果」を求めます。
この引数によって、どれくらいeを掛け合わせるかが決まります。
MathExpm1関数の戻り値について
MathExpm1関数は、指定した指数に基づいて「eをその指数で掛けた値から1を引いた結果」を返します。戻り値は次のような場合に応じて変わります。
- 通常の数値が返る場合
引数に普通の数値を指定した場合、「eの指定した指数乗 – 1」の計算結果が返ります。たとえば、valueが2の場合、eの2乗から1を引いた数値が返されます。 - オーバーフローの場合
引数が非常に大きい数になると、計算結果が大きすぎてコンピュータで扱えなくなり、無限大(INF)が返されます。これは、valueがとても大きな数のときに起こります。 - アンダーフローの場合
引数が非常に小さく、計算結果がゼロに近づきすぎると、結果として0が返されます。これは、valueが非常に小さい負の数(-1000など)のときに起こります。
MathExpm1関数の戻り値は、通常の計算結果を返すだけでなく、特殊な状況での計算限界にも対応しており、無限大やゼロが返されることがあります。
MathExpm1関数を使ったサンプルコード
#define GRAPH_WIDTH 750 // グラフの幅を指定
#define GRAPH_HEIGHT 350 // グラフの高さを指定
#include <Graphics\Graphic.mqh> // グラフィック描画用のライブラリをインクルード
CGraphic ExtGraph; // グラフィックオブジェクトを作成
//+------------------------------------------------------------------+
//| スクリプトプログラム開始関数 |
//+------------------------------------------------------------------+
void OnStart()
{
//--- step 1で0から8の9個の値を取得する
vector X(9,VectorArange); // 0から始まる9つの連続した数値を持つベクトルXを生成
Print("vector X = \n",X); // 作成したベクトルXの内容をエキスパートログに出力
//--- 各Xベクトル値の「e」(ネイピア数、オイラー数)を使った指数関数の計算結果を取得
X=MathExpm1(X); // Xの各値に対してMathExpm1を適用(e^X - 1)を計算
Print("MathExpm1(X) = \n",X); // 計算結果のベクトルをエキスパートログに出力
//--- 計算結果のベクトルの値を配列に転送する
double y_array[]; // 配列y_arrayを宣言
X.Swap(y_array); // ベクトルXの内容をy_arrayにコピー
//--- 計算されたベクトルのグラフを描画する
CurvePlot(y_array,clrDodgerBlue); // y_arrayの値をもとにグラフを描画
//--- EscapeキーまたはPgDnキーが押されるまで、スクリプトが終了しないよう待機
while(!IsStopped())
{
if(StopKeyPressed()) // 停止キーが押されたらループを終了
break;
Sleep(16); // スリープ処理を挟んで待機
}
//--- グラフ描画オブジェクトのクリーンアップ処理
ExtGraph.Destroy(); // 使用したグラフィックオブジェクトを削除してリソースを解放
}
//+------------------------------------------------------------------+
//| ベクトルに「value」を「step」単位で入力する |
//+------------------------------------------------------------------+
template<typename T>
void VectorArange(vector<T> &vec, T value=0.0, T step=1.0)
{
// vecのサイズ分だけループし、各要素にvalueからの連続した値を代入
for(ulong i=0; i<vec.Size(); i++,value+=step)
vec[i]=value; // 各要素にvalueを代入し、次のステップでvalueを更新
}
//+------------------------------------------------------------------+
//| ESCまたはPgDnが押されたら「true」を返す |
//+------------------------------------------------------------------+
bool StopKeyPressed()
{
//--- ESCが押されたか確認し、押されていたら「true」を返す
if(TerminalInfoInteger(TERMINAL_KEYSTATE_ESCAPE)!=0)
return(true);
//--- PgDnが押され、スクリーンショットが正常に撮れた場合に「true」を返す
if(TerminalInfoInteger(TERMINAL_KEYSTATE_PAGEDOWN)!=0 && MakeAndSaveScreenshot(MQLInfoString(MQL_PROGRAM_NAME)+"_Screenshot"))
return(true);
//--- どちらも押されていなければ「false」を返す
return(false);
}
//+------------------------------------------------------------------+
//| グラフオブジェクトを作成して曲線を描く |
//+------------------------------------------------------------------+
void CurvePlot(double &x_array[], double &y_array[], const color colour)
{
//--- グラフオブジェクトを作成し、指定したサイズで配置
ExtGraph.Create(ChartID(), "Graphic", 0, 0, 0, GRAPH_WIDTH, GRAPH_HEIGHT);
//--- 配列データを元に曲線を追加
ExtGraph.CurveAdd(x_array, y_array, ColorToARGB(colour), CURVE_LINES);
//--- グラフの位置を上部に調整
ExtGraph.IndentUp(30);
//--- 全ての曲線を描画
ExtGraph.CurvePlotAll();
//--- 操作説明のテキストをグラフに追加
string text1="Press ESC to delete the graph and stop the script, or";
string text2="Press PgDn to create a screen, delete the graph and stop the script";
ExtGraph.TextAdd(54, 9, text1, ColorToARGB(clrBlack));
ExtGraph.TextAdd(54,21, text2, ColorToARGB(clrBlack));
//--- 画面更新
ExtGraph.Update();
}
//+------------------------------------------------------------------+
//| スクリーンショットを撮り、画像をファイルに保存する |
//+------------------------------------------------------------------+
bool MakeAndSaveScreenshot(const string file_name)
{
string file_names[]; // ファイル名を格納する配列を宣言
ResetLastError(); // エラーをリセット
//--- ファイル選択ダイアログを表示し、保存先のファイル名を選択
int selected=FileSelectDialog("Save Picture", NULL, "All files (*.*)|*.*", FSD_WRITE_FILE, file_names, file_name+".png");
if(selected<1) // 選択されなかった場合またはエラーが発生した場合
{
if(selected<0) // エラーが発生した場合のみエラーメッセージを表示
PrintFormat("%s: FileSelectDialog() function returned error %d", __FUNCTION__, GetLastError());
return false; // スクリーンショットを保存しなかった場合、falseを返す
}
//--- スクリーンショットを保存する処理
bool res=false;
if(ChartSetInteger(0,CHART_SHOW,false)) // チャートの表示を一時的に非表示
res=ChartScreenShot(0, file_names[0], GRAPH_WIDTH, GRAPH_HEIGHT); // スクリーンショットを撮影
ChartSetInteger(0,CHART_SHOW,true); // チャートの表示を再表示
return(res); // スクリーンショット保存の結果を返す
}
このコードは、まず0から8までの連続した数値をベクトルXに生成し、それぞれの値を使って「eのその値乗 – 1」の計算を行い、その結果を配列y_arrayに格納します。
次に、その配列の値を使ってグラフを作成し、表示します。
ユーザーがEscapeキーを押すとグラフが削除されてスクリプトが終了し、PgDnキーを押すとグラフのスクリーンショットが保存されてから終了します。
サンプルコード解説1: グローバル領域での定義
#define GRAPH_WIDTH 750 // グラフの幅を設定
#define GRAPH_HEIGHT 350 // グラフの高さを設定
#include <Graphics\Graphic.mqh> // グラフィック描画用のライブラリをインクルード
CGraphic ExtGraph; // CGraphicクラスのインスタンスを作成
定義の詳細
グラフの幅と高さの定義
グラフの幅を750ピクセル(デジタル画像を構成する最小の単位)に、グラフの高さを350ピクセルに設定しています。defineディレクティブを使用して定数を定義することで、コード内でこれらの値を使用する際に簡単に参照できるようになります。
グラフィックライブラリのインクルード
includeディレクティブを使用して、グラフィック関連の機能を提供するライブラリファイル「Graphic.mqh」をインクルードしています。このライブラリには、グラフの描画や曲線の追加など、グラフィック操作に必要な関数やクラスが定義されています。
グラフィックオブジェクトの作成
CGraphicクラスのインスタンスであるExtGraphオブジェクトを作成しています。このインスタンスは、グラフの描画や操作に使用されます。
クラスはオブジェクト指向プログラミングの基本要素であり、特定の機能を持つオブジェクト(変数や配列など)を作成するためのテンプレートです。
サンプルコード解説2: OnStart関数の中その1
//+------------------------------------------------------------------+
//| スクリプトプログラム開始関数 |
//+------------------------------------------------------------------+
void OnStart()
{
//--- step 1で0から8の9個の値を取得する
vector X(9,VectorArange); // 0から始まる9つの連続した数値を持つベクトルXを生成
Print("vector X = \n",X); // 作成したベクトルXの内容をエキスパートログに出力
//--- 各Xベクトル値の「e」(ネイピア数、オイラー数)を使った指数関数の計算結果を取得
X=MathExpm1(X); // Xの各値に対してMathExpm1を適用(e^X - 1)を計算
Print("MathExpm1(X) = \n",X); // 計算結果のベクトルをエキスパートログに出力
サンプルコード解説2:OnStart関数の中その1
この部分では、OnStart関数内でベクトルXを生成し、さらにMathExpm1関数を用いて計算を行っています。
- ベクトルXの生成
vector X(9, VectorArange);の行では、9つの連続した数値(0から始まる)を持つベクトルXを生成しています。このとき、VectorArange関数が呼び出され、Xベクトルの各要素に順に値を代入します。生成したベクトルXの内容は、Print関数を使用してエキスパートログに出力され、コードの進行状況やXの内容が確認できるようになっています。 - MathExpm1関数を用いた指数関数の計算
次の行で、MathExpm1関数を使い、ベクトルX内の各要素に対して「eのその値乗 – 1」の計算を行います。これにより、Xの各要素が計算後の値に置き換えられます。MathExpm1関数を使用することで、計算誤差を抑えながらより正確な結果を得ることが可能です。計算後のベクトルXの内容も、Print関数でエキスパートログに出力され、計算結果を簡確認できます。
この部分は、連続した数値を持つベクトルを生成し、それらの値に対して指数関数的な計算を施す準備段階にあたります。
サンプルコード解説3:OnStart関数部分その2
//--- 計算結果のベクトルの値を配列に転送する
double y_array[]; // 配列y_arrayを宣言
X.Swap(y_array); // ベクトルXの内容をy_arrayにコピー
//--- 計算されたベクトルのグラフを描画する
CurvePlot(y_array,clrDodgerBlue); // y_arrayの値をもとにグラフを描画
この部分では、計算結果を配列に転送し、そのデータを用いてグラフを描画しています。
- ベクトルから配列への転送
配列y_arrayを宣言し、ベクトルXに含まれる計算結果をy_arrayにコピーしています。X.Swap(y_array)とすることで、ベクトル内のすべての要素がy_arrayに転送され、グラフ描画に使用できる形に変換されます。 - グラフの描画
CurvePlot関数を使い、y_arrayの値をもとにグラフを描画しています。この関数は、指定された色clrDodgerBlueで描画され、計算結果が視覚的に確認できるようになります。
この部分では、計算したデータを配列形式に整え、それを用いてグラフ描画の処理を行っています。
サンプルコード解説4:OnStart関数部分その3
//--- EscapeキーまたはPgDnキーを押してグラフを削除し、終了するまで待機
while (!IsStopped())
{
if (StopKeyPressed()) // 停止ボタンが押されているかを確認
break;
Sleep(16); // 16ミリ秒待機してから次のループへ
}
//--- グラフィックのクリーンアップ
ExtGraph.Destroy(); // ExtGraphオブジェクトを削除してメモリを解放
}
この部分のコードは、グラフを表示させたまま、ESCキーまたはPgDnキーが押されるのを待機する処理です。
まず、while文でループを開始し、スクリプトが停止されていない間、つまりIsStopped関数がfalseを返す間はループが続きます。ループの中でStopKeyPressed関数が呼ばれ、ESCキーまたはPgDnキーが押されたかを確認します。もし、いずれかのキーが押されている場合、break文によってループを抜け、待機処理を終了します。これにより、ユーザーが任意のタイミングでグラフの表示を終了できるようになっています。
ループ内でSleep関数が16ミリ秒の待機を挟むことで、CPU負荷を軽減しながらキーの入力を定期的に確認します。待機処理が終了すると、グラフのクリーンアップに移ります。ExtGraphインスタンスに対してDestroyメソッドを呼び出し、グラフを破棄して使用していたメモリを解放します。これにより、スクリプトの終了時にリソースが適切に解放されます。
サンプルコード解説5: VectorArange関数(オリジナル関数)部分
//+------------------------------------------------------------------+
//| ベクトルに「value」を「step」単位で入力する |
//+------------------------------------------------------------------+
template<typename T>
void VectorArange(vector<T>& vec, T value = 0.0, T step = 1.0)
{
// vecの各要素にvalueからstepごとに増加した値を設定
for (ulong i = 0; i < vec.Size(); i++, value += step)
vec[i] = value; // 各要素に値を代入
}
ここでは、VectorArange関数がどのようにベクトルに値を設定しているのかについて解説します。VectorArange関数は、指定したベクトルに対して、一定の間隔で数値を入力するためのテンプレート関数です。引数にベクトルと2つの数値をとり、指定された数値から始めて指定の間隔で順に数値を増加させながらベクトルに入力していきます。
VectorArange関数の引数について
1つ目の引数として、ベクトルvecを参照渡しで受け取っています。参照渡しにより、関数内での操作が直接ベクトルvecに反映され、関数外のvecにも影響します。このように引数にベクトルを持たせることで、関数が任意のベクトルサイズに対応でき、さまざまな型Tに対して同じ関数を利用できる汎用性も確保されています。
※<T>
という表記は、「テンプレート引数」と呼ばれるもので、C++やMQL5では、関数やクラスをどんなデータ型にも対応させたいときに使います。通常、関数を作成する時はデータ型を「int型」や「double型」のように指定して、その型だけに対応するようにしますが、テンプレート引数を使うと「どの型にも対応できる」ようになります。
例えば、この<T>
は「仮のデータ型」を示していて、「まだ決まっていない型」として扱われます。関数やクラスを使う時に、初めてその「T」が具体的な型に置き換わるイメージです。このようにすることで、例えば整数でも小数でも同じ処理ができる関数やクラスを一度に作ることができます。
このコードでは、T
を使うことで、ベクトルに整数や小数を入れる場合にも同じ関数を使えるようにしているため、柔軟に利用することができます。
2つ目の引数valueは、初期値を設定するための値です。この引数にはデフォルトで0が指定されていますが、必要に応じて異なる数値を指定して開始値を変更できます。
3つ目の引数stepは、増加の間隔を指定する値です。この値にはデフォルトで1が指定されており、各ベクトルの要素にこの間隔で値を設定します。stepを大きくすれば広い間隔で、stepを小さくすれば細かい間隔で値を増加させることが可能です。
※テンプレート関数についての詳細は↓の記事をご参照ください。
関数の動作
関数内では、forループを用いて、vecのサイズ分だけ繰り返し、valueから始めてstepずつ増加させた値を順にベクトルvecに設定しています。各ループでvecの次の要素にvalueが設定され、その後valueにstepが加算され、次のループで新しい値が設定されるという流れが続きます。
このようにして、vecには0から始まって1ずつ増える数値が順に格納されることになり、たとえばvecの要素数が9であれば、0から8までの数値が1刻みで格納されます。
サンプルコード解説6: StopKeyPressed関数(オリジナル関数)部分
//+------------------------------------------------------------------+
//| ESCが押されたら「true」を返す |
//| PgDnが押されたら、グラフのスクリーンショットを撮り、「true」を返す |
//| その他の場合は「false」を返す |
//+------------------------------------------------------------------+
bool StopKeyPressed()
{
// --- ESCが押されたら「true」を返す
if (TerminalInfoInteger(TERMINAL_KEYSTATE_ESCAPE) != 0)
return(true);
// --- PgDnが押されてグラフのスクリーンショットが正常に取得されたら、「true」を返す
if (TerminalInfoInteger(TERMINAL_KEYSTATE_PAGEDOWN) != 0 && MakeAndSaveScreenshot(MQLInfoString(MQL_PROGRAM_NAME) + "_Screenshot"))
return(true);
// --- その他の場合は「false」を返す
return(false);
}
StopKeyPressed関数は、ESCキーやPgDnキーが押されたかどうかを検出し、特定の動作を行うためのカスタム関数です。この関数は、グラフ表示の終了条件を管理する重要な役割を持っています。
まず、TerminalInfoInteger関数を使用してESCキーの状態を確認しています。引数として、TERMINAL_KEYSTATE_ESCAPEという識別子を指定しています。この識別子は、ESCキーの押下状態を取得するために使用され、キーが押されている場合には非ゼロの値が返されます。もし非ゼロが返された場合、関数はtrueを返し、スクリプト内でグラフの表示を終了させることができます。
次に、PgDnキーが押されているかどうかを確認しています。この場合もTerminalInfoInteger関数を使用しており、引数としてTERMINAL_KEYSTATE_PAGEDOWNという識別子を指定しています。この識別子は、PgDnキーの押下状態を取得するために使用され、押されていれば非ゼロが返されます。PgDnキーが押されているときには、さらにMakeAndSaveScreenshot関数を呼び出してスクリーンショットをファイルに保存します。
MakeAndSaveScreenshot関数には、スクリーンショットのファイル名を指定するための文字列が引数として渡されています。この文字列は、MQLInfoString関数を使用して生成されています。MQLInfoString関数の引数には、MQL_PROGRAM_NAMEという識別子が指定されており、これによって現在のスクリプト名が取得されます。スクリーンショットのファイル名には、このスクリプト名に「_Screenshot」という文字列を追加し、ファイルが保存されます。
スクリーンショットの保存に成功した場合にはtrueが返され、PgDnキーによる終了動作とスクリーンショットの保存が同時に行われます。いずれのキーも押されていない場合にはfalseが返され、スクリプトは実行を続行します。この構造により、ESCまたはPgDnが押されるまでグラフを表示し、必要に応じてスクリーンショットを保存してからスクリプトを終了する動作が可能になります。
サンプルコード解説7:CurvePlot関数(オリジナル関数)部分
//+------------------------------------------------------------------+
//| グラフオブジェクトを作成して、計算したデータを基に曲線を描画する |
//+------------------------------------------------------------------+
void CurvePlot(double &y_array[], const color colour)
{
// --- グラフの作成と設定
ExtGraph.Create(ChartID(), "Graphic", 0, 0, 0, GRAPH_WIDTH, GRAPH_HEIGHT);
// --- グラフにカーブを追加して描画する
ExtGraph.CurveAdd(y_array, ColorToARGB(colour), CURVE_LINES);
// --- テキストメッセージを画面に追加
string text1 = "Press ESC to delete the graph and stop the script, or";
string text2 = "Press PgDn to create a screen, delete the graph and stop the script";
ExtGraph.TextAdd(54, 9, text1, ColorToARGB(clrBlack));
ExtGraph.TextAdd(54, 21, text2, ColorToARGB(clrBlack));
// --- グラフの更新
ExtGraph.Update();
}
CurvePlot関数は、指定されたデータを使ってグラフに曲線を描画するオリジナルの関数です。この関数では、配列内のデータを利用して曲線をグラフ上に描き、さらにグラフの説明文を表示します。
まず、グラフを描画するためにグラフィックオブジェクトを作成しています。Createメソッドを使用して、グラフのID、表示位置、サイズ(幅と高さ)を設定し、チャート上にグラフの枠を用意します。
次に、CurveAddメソッドを使って、y_array配列に格納されたデータを曲線として描画します。この際、曲線の色はcolour引数で指定され、ここでは指定された色に変換して適用しています。また、曲線は「線」として描画する設定になっています。
また、グラフの下部にはESCキーとPgDnキーの使用説明が表示されます。TextAddメソッドで、2行にわたってテキストを追加し、色も指定しています。最後にUpdateメソッドを呼び出して、グラフとテキストの更新を実行し、最終的なグラフが表示されます。
サンプルコード解説8:MakeAndSaveScreenshot関数(オリジナル関数)部分
//+------------------------------------------------------------------+
//| スクリーンショットを撮り、画像をファイルに保存する |
//+------------------------------------------------------------------+
bool MakeAndSaveScreenshot(const string file_name)
{
string file_names[]; // ファイル名を格納する配列を定義
ResetLastError(); // エラー情報をリセット
// ファイル選択ダイアログを表示し、選択されたファイル数を取得
int selected = FileSelectDialog("Save Picture", NULL, "All files (*.*)|*.*", FSD_WRITE_FILE, file_names, file_name + ".png");
if (selected < 1) // ファイルが選択されなかった場合
{
if (selected < 0) // エラーが発生した場合、エラー内容を出力
PrintFormat("%s: FileSelectDialog() function returned error %d", __FUNCTION__, GetLastError());
return false;
}
// スクリーンショットを撮りファイルに保存
bool res = false; // 成功を示す変数を初期化
if (ChartSetInteger(0, CHART_SHOW, false)) // チャートを一時的に非表示
res = ChartScreenShot(0, file_names[0], GRAPH_WIDTH, GRAPH_HEIGHT); // スクリーンショットを撮影
ChartSetInteger(0, CHART_SHOW, true); // チャートを再表示
return(res); // スクリーンショットの成功結果を返す
}
MakeAndSaveScreenshot関数は、スクリーンショットを撮影し、指定したファイル名で保存する機能を持っています。この関数は、ユーザーがPgDnキーを押した際に呼び出され、現在のチャートのスクリーンショットをファイルに保存する手順を実行します。
最初に、file_namesという空の文字列配列を作成しています。これは、ファイル選択ダイアログから選ばれたファイル名を格納するための配列です。また、ResetLastError関数を呼び出してエラー状態をリセットし、後の処理で発生するエラーが過去のエラーと混在しないようにします。
次に、FileSelectDialog関数を使って、ファイルの保存ダイアログを表示します。この関数の最初の引数にはダイアログタイトル(”Save Picture”)、次の引数にNULL、そしてファイルの種類として”All files (.)|.“を指定しています。
この”(.)|.“の形式は、ファイルダイアログでのファイルフィルターを設定するための書式です。
左側の(.)はフィルターの表示名で「すべてのファイル」を示し、右側の.はフィルターの実際の条件を指定しています。
これにより、ダイアログにすべてのファイルを表示するようになります。最後の引数には、デフォルトのファイル名として指定されたfile_nameに拡張子”.png”を追加した文字列を渡しています。FileSelectDialog関数が成功すると、選ばれたファイル名がfile_names配列に格納され、選択数が返されます。
ファイルが選択されなかった場合、またはエラーが発生した場合はfalseを返します。選択にエラーが発生した場合、GetLastError関数で取得したエラーコードをPrintFormat関数でエラーメッセージとして出力します。
スクリーンショットの保存処理では、まずChartSetInteger関数でチャート表示を一時的に非表示にします。引数には、チャート識別子として0、プロパティとしてCHART_SHOW、表示を無効にするためのfalseが指定されています。次に、ChartScreenShot関数を呼び出し、file_names配列の最初の要素に指定されたファイル名で、GRAPH_WIDTHとGRAPH_HEIGHTのサイズでスクリーンショットを保存します。最後にChartSetInteger関数でチャートを再表示します。
関数の戻り値として、スクリーンショットが正常に保存されたかどうかの成否が返されます。
MathExpm1関数を使ってEAを作る際のアイディア
MathExpm1関数をEA(エキスパートアドバイザー)で使用することで、特定の金融計算やアルゴリズムの精度を高めることができます。以下に、EA開発のアイディアをいくつか紹介します。
損益の複利計算の精度向上
EAで複利の損益計算を行う場合に、MathExpm1関数を活用すると、特に小さな変動率における計算誤差が抑えられ、精度が向上します。例えば、毎日ある一定のパーセンテージで増減する資産の推移をシミュレートする際、指数関数計算が必要になりますが、MathExpm1関数を使用することで、計算の信頼性が向上します。
リスク管理における最適ポジションサイズ計算
リスク管理のために、毎回のトレードで最適なポジションサイズを決定するロジックにMathExpm1関数を組み込むと、資産の増減に対してより細かくポジションサイズを調整することができます。例えば、リスク許容度や資産の変化率を指数的に調整するようなEAでは、この関数を用いることで安全性を維持しながら資産を運用することが可能です。
非線形(直線的でない)の取引戦略での活用
MathExpm1関数は指数関数(数を特定の指数で累乗する計算)計算をベースとしているため、非線形(直線的でない)な価格変動やボラティリティに対応する取引戦略で役立ちます。
たとえば、ボラティリティに基づいて売買シグナルを出す場合や、価格が特定の閾値を超えたときにロット数を増減するような戦略に活用できます。この関数を使うことで、より滑らかで安定した取引ロジックを構築できます。
パフォーマンス測定のためのリターン計算
EAのパフォーマンス測定においても、MathExpm1関数は有効です。特にリターンが小さい場合、単純な計算では誤差が生じやすくなりますが、MathExpm1関数を使うことで、小数点以下のリターン計算でも精度が高まります。これにより、トレード戦略の有効性をより正確に評価でき、改善のヒントを得るのに役立ちます。
これらのアイディアを基に、MathExpm1関数を取り入れたEA開発を行うことで、計算精度の高い、信頼性のあるトレード戦略を作成することが可能です。